2011年冬
『カノ嘘』の映画化が再び動き出す。小学館クロスメディア事業センターと協力して対応。マンガ家本人の希望で、オファーがあった企業の担当者と個別面談。
2012年春
映画化決定を連載誌『Cheese!』ほかで公式発表。
2012年夏
主人公「小枝理子」役の女優のオーディション。オーディションにはマンガ家と編集者も立ち会う。
2012年夏
制作側と脚本のやりとりが頻繁になる。

主人公の男性アキ役に佐藤健、アキの恋人リコ役に大原櫻子が決定。宣伝用写真もマンガのシーンと同じ服やポースで撮るなど、キャストやスタッフに強いこだわりが感じられる。

Making-2

「2009年から映像化のオファーを沢山頂いていたのですが、時期尚早とお返事を保留させて頂いてました。ストーリーの方向性もはっきりして、青木さんとの相談でも『今なら映像化しても原作と大きなブレはないだろう』と判断したのが2011年冬。それから各社に映像化の企画書を募りました。生意気にも、コンペで決めさせて頂こうと思ったんです」
小学館も以前とは違う体制で取り組むことに。前2作は社内外の連絡役も畑中ひとりで務めたが、『カノ嘘』では小学館のクロスメディア事業センターが企画から参加した。ここは小学館が権利を持つ作品やキャラクターを、テレビ番組や映画などに展開し、商品化に携わる専門の部署。制作会社得意分野なども把握し、畑中をサポートしてくれた。そうした知見や経験をもとに制作会社を決め、映画化の正式発表を行ったのは2012年春だった。
「青木さんはとても現実的な人で、『映像化の際は、必ず嫌な思いはするもんだ』と思ってるんです。だからこそ『私にとってはNOだけど、この人がどうしてもと言うなら信じよう』そう思える相手に頼みたいという考えでした。本人の希望でオファーを受けた会社すべてに会ったのですが、もともと青木さんの作品が好きな人ばかり。私も話し合いに同席したのですが、皆さんいい人で、私たちとも気が合うんですよ。だから1社に絞り込むのは余計に悩ましかったですね」。
心苦しい決定の後、2012年春以降、畑中は先方から届く資料にプロット段階から目を通し、制作会社と頻繁に会うようになる。脚本はメールで届くが、その後に直接先方と話し合って確認や相談をするからだ。
「私は編集者ですから、マンガの展開も表現も『なぜそうしたか』には理由があります。だから映画をつくるプロが『この展開で』と決めたなら、相応の理由があると思い、基本は先方にお任せの立場です。一方で作品の責任者の1人として、マンガ家からの信頼と読者が作品を大事に思う気持ちも預かっています。ですから『この人はこんなセリフは言わない』『設定を変えると根本から違ってくる』など、作品の世界観とずれを感じた部分は必ず意図を確認して、駄目なら駄目と言うストッパー役なのだと思っています」。

映画化をお願いする制作会社を1社に絞り込んだ後、そちらへOKの返事はクロスメディア事業センターから伝えてもらいました。しかし残念ながら選考にもれてしまった他社には、私が直接訪問して、担当者に会っておわびを伝えようと決めていたんです。誰でもやりたがる楽しいことは、誰かに任せて構わない。誰かに頼みたくなる嫌な仕事は、人に頼まないで自分でやる。それが私の流儀なんです。誰もが嫌がるデリケートな問題の扱いほど、人に頼むとろくなことになりません。それに映像化の話の中で、先方は私を責任者の1人として接してきたのですから、最後の断りとおわびに行かないのは失礼だと思っています。