一大メディアミックスプロジェクトができるまで 『コロコロコミック』連載中の『妖怪ウォッチ』

西手成人 第二コミック局『コロコロコミック』

2004年4月入社。実家が自営業だったこともあり、「本を売る」ことに興味を感じて営業部門を志望した。制作局書籍・コミックス制作課に配属され、編集部とのやり取りも増える中で、編集業務やクロスメディア展開に興味がわいて異動を希望。2010年から『コロコロコミック』編集部に配属される。現在、大ヒットを続ける『妖怪ウォッチ』の連載マンガ担当編集者。

『妖怪ウォッチ』は2年間でこう進化してきた

2012年初頭
ゲーム制作会社のレベルファイブと関係各社との打ち合わせが始まる。
2012年12月
『コロコロコミック』にてマンガ『妖怪ウォッチ』の連載がスタート。
2013年6月
コロコロコミックス『妖怪ウォッチ』第1巻発売
2013年7月
ゲーム『妖怪ウォッチ』発売。
2014年1月
テレビアニメ『妖怪ウォッチ』放送スタート。
メダルやウォッチなどのおもちゃ販売開始。
2014年7月
ゲーム『妖怪ウォッチ2 元祖/本家』発売。
2014年12月
ゲーム『妖怪ウォッチ2 真打』発売。
『映画 妖怪ウォッチ』公開。

最初のプロモーション映像にも登場するなど、当初から主要キャラクターとなっていたジバニャン。デザインは子どもが好きになれるように、何度もブラッシュアップされている。

2012年

普通の子が主人公。異色のゲームをマンガにする。

「『イナズマイレブン』や『ダンボール戦機』でコラボしてきたゲーム制作会社、レベルファイブの次回作を担当しないか?」──そう当時の副編集長から打診されたのが、私と『妖怪ウォッチ』との出会いでした。もともと『コロコロコミック』編集部ならマンガも記事も担当でき、アニメ化や映画化にも携われると考えて異動してきたので、こうしたクロスメディア展開される作品は期待通りの仕事。すぐに引き受け、小学館の担当者の一人として、レベルファイブ、バンダイ、テレビ局、映画会社、広告会社などとの打ち合わせに参加することになったのです。

打ち合わせはゲーム発売の1年以上前、2012年の1月に始まりました。最初にゲームのプロモーション映像を見せてもらったのですが、そこに登場した主要キャラクターのジバニャンを見て、「これはかわいい!」とすぐに惹かれてしまいました。そして多くの人が楽しめそうなゲームの雰囲気に引き込まれましたね。ゲーム開発やマンガと並行して、テレビアニメ、おもちゃなどの企画も進んでいきましたが、そのほとんどはゲーム発売後の販売や公開。マンガだけがゲームに先行する形に決まりました。いちばん最初にこの『妖怪ウォッチ』の世界を、具体的に知らせる役割を担ったわけです。『妖怪ウォッチ』をどう伝え、盛り上げていくか、レベルファイブと毎月会議を重ねながらとにかく考えました。そしてゲームの開発とともに、一歩一歩マンガの内容を固めていきました。

『妖怪ウォッチ』は、「普通の小学生が少し不思議な体験をする、それは妖怪の仕業で……」というのが基本のストーリーです。マンガを作るときに課題となったのが、この登場人物が「普通の街に暮らす普通の人々」だという点。世界をめざす熱血タイプではなく、すごい特技もありません。それでどうしたら『コロコロコミック』の読者にウケる作品になるのか、マンガ家と一緒に悩み続けました。マンガ家に何度もネーム(絵コンテ)を描いてもらった末にたどり着いたのが、「普通」というテーマをひたすらギャグにしようということでした。何の変哲もない「普通」も、とことん突き詰めればギャグになりますし、「普通」な子が妖怪のせいで全然普通じゃなくなれば、そこのギャップでも笑えます。そうしてマンガの方向性が固まっていきました。「普通で十分、目標を押しつけてほしくない」──そんな子どもたちの気分ともマッチしたのでしょう。2012年12月に始まった連載は、すぐ安定した人気を得るようになりました。

マンガ家から西手の元に届いたネーム(絵コンテ)。ギャグの切れ味が、面白さのポイントのひとつ。