備前島 11月には、朝日新聞の書評欄「売れてる本」で紹介されました。売れた実績、本格ミステリーとしての水準の高さ、両方が評価されたのは心強かったですね。すぐに記事の執筆者と新聞社に連絡して、宣伝物として使用許可をもらいました。掲載1週間後には、朝日新聞の書評紹介をアピールする書店POPを完成させましたから。

小松この時期からPOPや雑誌広告で、従来の中村さんのイラストと執事のセリフに、朝日新聞の書評紹介も素材に加えました。

備前島書評の評価を通じて、「ライトノベルではなく、売れている本格ミステリー」だと、文芸読者層や書店の文芸担当者に紹介する段階に移っていきました。

備前島 12月からはテレビCMも始めました。CMは「売れていること」「新聞書評に載った本格ミステリー」という信頼感は十分生かしながら、初めて知る人に向けて、原点に戻ったマンガ風の見せ方という、2つの異なる要素を盛り込んで制作しました。

小松 イラストが画面に大きく出て、毒舌執事が例のセリフを話す印象的なCMで。

備前島 この本を知らないマンガファン、アニメファンへのアピールもCMの狙いでしたから、執事役を人気声優の櫻井孝宏さんにお願いしたのです。逆にテレビCM用のイラストの使用許可を、社内の編集部に依頼した方が返事が遅くて困りましたけど。

矢沢 いや前にも話しましたけど、それは誤解ですから(笑)。

備前島 宣伝・販売の最前線と、編集部とでは時間感覚が少し違うのでしょうね。

小松CMは『名探偵コナン』でも放送され、この本は幅広い年齢層に広がりました。通常の文芸書籍は30代、40代の女性が中心購買層ですが、『コナン』を見る年代の子どもにも買ってもらえたようです。もともと10代、20代にも読者が多く、本当に全年齢層に読まれ始めた感じです。

備前島 交通広告は数ヵ月連続して掲示できる場所を確保。書店員からのコメント、書評、圧倒的な部数など、電車を降りても記憶に残る情報を随時盛り込みました。ただ、こうした広告展開はそれなりの予算も必要で、ある程度売り上げ見込みがないと難しいのです。

店用POPでもイラスト、毒舌セリフ、新聞書
評を盛り込んだ情報満載バージョンを制作。

WEBの話題づくりと書店販促を継続

備前島 テレビCMで最初に買ってくれるのは、声優ファンやアニメファンだと予測していました。そうした人はWEBでも検索して情報を探すタイプ。『謎解き』の特設サイトを開設し、ブログ、ツイッター、クチコミで話題にしてもらえるよう、声優の櫻井さんの毒舌が聞けるコーナーもつくりました。

矢沢 そのおかげで、12月はさら売り上げが加速して驚きました。重版の部数も、最初の数千部から、この頃は急に数万、10数万部単位になりましたね。

備前島 小学館の少女・女性マンガ誌、女性誌にも広告を掲載しています。「売れてる」の言葉だけでなく、部数の実績をもとに書店にアピールして、本の表紙を見せて陳列してもらう「面陳」をお願いしたかったのです。

小松 書店に重版情報を提供しながら、執事やお嬢様刑事のキャラクターで書店POPや文庫用しおりもつくるなど、書店への販売支援も継続しています。ただCMの話題性のためか売れ行きが予想以上で、店頭在庫が枯れた時期があったことは今回の反省材料でした。

書店に部数とPOP制作を知らせる送付状。

キャラクターを強調したPOPとしおり。

朝日新聞書評欄を使った書店用POP。売れた実績、本格ミステリーとしての評価を紹介。

書店の応援に対するお礼とともに、朝日新聞書評欄への掲載を書店に連絡する手書きFAX。