トップブランドができるまで『小学館の図鑑NEO』シリーズ

北川吉隆

 出版局「児童図書」編集長/1992年4月入社

子どもの頃から生き物が好きで、小学館も図鑑の編集希望で入社。「最初は予想に反して(?)幼児誌の編集部に配属されました。でも編集者として成長するには、とてもいい部署で。ページを自分で構成し、デザイナーやカメラマン、イラストレーターなどなど、多くの方々と毎日のように、打ち合わせや編集作業が必要な現場でした。立体的な付録を企画するなど、普通の書籍編集者にはできないような経験もしてきましたね」。その後、『小学館の図鑑NEO』創刊を控えた「児童図書」編集部に異動。準備段階から10年以上、『NEO』の編集に携わっている。

STEP1■創刊決定時代に合わせて、再創刊する

2002年創刊の『小学館の図鑑NEO』は現在18巻まで刊行。およそ10年で535万部を超えた、学習図鑑売り上げNo.1のトップブランド。実は日本で“学習図鑑”の名称を初めて使ったのも小学館だ。その実績を磨き上げて新たなブランドを築いた編集部のこだわりを、『NEO』創刊時から携わり、現在は編集長を務める北川吉隆に聞いた。

■日本初の学習図鑑は、小学館がつくった!?

小学館の学習図鑑の始まりは、1956年(昭和31年)に創刊された『小学館の学習図鑑』シリーズ。全28巻が刊行され、日本の学習図鑑の先駈けともいわれる。

1973年には同シリーズのリニューアル版となる『新学習図鑑』シリーズを刊行。『学習図鑑』のリニューアル版だったが、テーマや内容の見直し、増ページなどの大幅な改訂も行われた。

「こういった図鑑は分冊で刊行されていました。年に数冊ずつで、全巻そろうまでに何年もかかるシリーズなんです。それだけに出版社も編集部も腰を据えて取り組む長期企画。今では具体的な数字はわからないのですが、『学習図鑑』も『新学習図鑑』も、とてもよく売れたそうです」(北川吉隆・出版局「児童図書」編集長/以下同)。

『学習図鑑』『新学習図鑑』は、その頃に子どもだった人の多くが、内容だけでなく、“オレンジの背表紙の図鑑”と覚えているほど親しまれた本。また、時期はやや重なるが、1971年には『小学館の学習百科図鑑』シリーズが創刊された。

「それまでと判型やイラストの雰囲気も変更され、背表紙も黄色になった『学習百科図鑑』は、新しい編集方針でつくられた図鑑。こちらも息の長いシリーズで、改定と重版を続けて30年近く出版されました。例えば『植物の図鑑』は累計で200万部も売れ、重版も70刷を数えています。『NEO』の執筆をお願いした方々も、子どもの頃に図鑑に親しんだ方が多く、「私はオレンジだった」「僕は黄色だ」と、思い入れがあって嬉しかったですね」。

■学習図鑑を丸ごと替える!? 長期事業の始まり

そんな長く親しまれていた図鑑を見直して、『小学館の図鑑NEO』を創刊した理由は何だったのだろうか。

残念なことに、どれほど良質な図鑑でも、年月の流れに伴って、部分的な改訂では間に合わない“時代とのズレ”が、内容や表現のあちこちで目に付くようになる。ロングセラーを続けていた『学習百科図鑑』にも、刷新の時期が訪れていた。

「社内では90年代の終わり頃から「学習図鑑を新しくすべきではないか」と議論されていたようです。しかし1冊200ページもの図鑑をすべてつくり替えて20冊近く出版するには、莫大なお金と時間が必要です。結論は何度か持ち越され、創刊が決まるのに数年を要しました。それまで図鑑はイラストが主体でしたが、現代のビジュアルに慣れた子ども向けに写真中心にするなど、大きな企画変更を行うことも決まりました」。

こうして『NEO』第1弾が発売されたのは2002年6月21日。この日に『恐竜』『動物』『植物』『昆虫』の4巻が同時に書店に並び、同年10月には『鳥』が加わった。翌年からは年1~2冊ずつ刊行し、現在までに18巻がそろっている。

「こうした図鑑の創刊までは、充分な時間があればさまざまな面で余裕をもって準備できますが、『NEO』は創刊までの編集期間が比較的短かったので、とても大変でした」。

小学館の学習図鑑シリーズは1956年に創刊された『学習図鑑』(左)、その内容を引き継いだ1973年創刊の『新学習図鑑』、それらとは異なる企画として1971年に創刊された『学習百科図鑑』がある。2002年創刊の『小学館の図鑑NEO』は、こうした図鑑編集のノウハウを生かしながら、現代にマッチした内容と表現でつくられ大ヒット記録を更新中だ。

北川が編集長を務める出版局「児童図書」編集部。編集者は『NEO』本体に加え、自分たちで企画したNEOブランドの図鑑や書籍、さまざまな児童向け図書をつくっている。

現在『小学館の図鑑NEO』は18巻まで刊行。鳥、動物、昆虫、植物、魚など身近な生き物を取り上げるシリーズから、太古の生物、宇宙や星などのジャンル、人間や乗り物といったテーマまで幅広い。2012年12月1日現在の最新刊は『岩石・鉱物・化石』。

『NEO POCKET』シリーズ、実物の大きさで掲載する絵本『原寸大』シリーズ、NEO+(プラス)『くらべる図鑑』、プレNEO『せいかつの図鑑』など、NEOブランドで多様な図鑑や書籍を展開しているのも特色。