雑誌編集

児童学習誌

  • Q.少子化ですが、児童書ではどういった取り組みをしていますか?
    A.少子化そのものをどうこうすることはできません。学習まんがを含む児童書の売り上げはここ3年ほど伸びており、少子化であっても、その分、親は少ない子どもに重点的に教育費を使うようです。 書籍内容の充実はもちろんのことですが、書籍情報をいかに効率よく伝えられるか、SNSの効果的な利用を含めた宣伝戦略、読者の需要にピンポイントで応えられるような市場調査が重要かと認識しています。 また、国内の学習塾との連携、外国市場への進出にも取り組んでいます。
  • Q.出版不況と言われますが、紙にこだわり続けますか?
    A.こだわり続ける部分と、デジタル化に柔軟に対応しなければならない部分があると感じています。私自身は児童学習局にいて、絵本や図鑑など、大半の出版物は子ども向けのものですので、紙でなければ伝えられないものもあると思っています。 たとえば絵本は、読み聞かせを通した親子のあったかいふれあい、お母さん、お父さん独自のテンポでページをめくる行為、そういったものは後生に残さなければいけない文化でもあるし、小学館が率先してやる必要があると思います。 一方で、デジタル化へのニーズにも対応するため、私がいる保育雑誌の編集部では、自ら動くことで保育者が使っているウェブサイトの会社と協業し、記事配信をはじめました。小学館がもっている人脈でつくったしっかりした記事を、より多くの読者に届けることができます。 ものによって柔軟に見極めていくことが必要かなと思います。
  • Q.女性誌と児童学習誌のご経験があるそうですが、ふたつの局で、やりがいは違いますか?
    A.局の風土が違うので、やりがいもまったく違ってきます。女性誌は大所帯で、雑誌によっては100人くらいのスタッフが関わるので、チームでひとつの方向を向いて、一丸となって頑張るという達成感がありました。入稿のときはみんなで徹夜をして、明け方、朝ごはんを食べて帰宅……なんてこともありましたが、とにかく楽しかったです。一方で今の局は、編集部は少人数ですが、雑誌をやりながら書籍も担当させてもらえることもあり、ひとりでひとつのことにじっくり取り組める良さがあります。スケジュールもある程度自分で管理できるので、子どもがいて時短勤務中の私の生活パターンにはぴったりです。また、書籍としてかたちになり、書店に並んだときの喜びはひとしおです。書店イベントなど、読者のみなさんに直接お目にかかる機会があるとき、やりがいを感じます。
  • Q.教育専門誌の編集者は教員免許を持っているのですか?
    A.編集部の中には教職免許を持っている人もいますが、私は持っていません。自分の経験からプランを考えることができませんが、男性が女性誌に配属されたりすることもあるのですし、どの仕事でも同じことです。学習指導要領を読んだり、書店の学校教育の棚で売れている本を読んだり、公開授業を見たり、先生が参加するセミナーに取材として参加したり、仲良くなった先生と食事をしながら本音を聞いたりして、企画を考えます。「自分が先生だったら、これを読んで授業ができるか? 子どもたちをまとめられるだろうか?」と考えながら、つくっています。私が実際に子どもたちの前で授業をすることはできませんが、未来を育てる教育の一端を担えていることは、やりがいに感じています。

コミック誌

  • Q.新入社員が担当作家を持つまでの流れを教えてください。
    A.あくまでうちの編集部の話ですが、配属されるとまず先輩編集者が担当している作品にサブ担当として付くことになります。そこから半年くらい、一緒に打ち合わせをしたり、単行本作業など一連の仕事を経験して、まんが家と信頼関係を築いたところで独り立ちとなります。
  • Q.まんが編集者に必要な素質はありますか?
    A.伝える相手が誰であれ、自分が「おもしろい」と思う作品には胸を張って「おもしろい」と言い、「つまらない」と思ったものには「つまらない」と言い張れるだけの度胸があること。また、そのために自分にとっての「“おもしろさ”とはなんなのか」が言語化されていることかと思います。まんが家や編集長などと自分の立場を比べて、萎縮して、作品に対する感覚に嘘をついてしまっては、いい作品づくりはできません。
  • Q.記事のレイアウト・デザインには、編者者がどれくらい関わるのですか?
    A.私が所属する『コロコロコミック』の、表紙を例にご説明します。表紙担当の編集者がまず構成を考え、ラフ(デザインの設計図のようなもの)を起こします。どこに何の要素を置くか、それぞれどれくらいの大きさにしたいかなど、かなり詳細に書きます。数パターン用意し、そこで編集長と相談して方向性を決め、デザイナーに依頼します。上がったデザインに対して編集者が修正の指示を出して、入稿・校正という流れ。つまりは、編集者は主体的に、かなり細部に渡ってレイアウト・デザインに関わるのです。
  • Q.生活が不規則なイメージがありますが、いかがでしょう?
    A.全体的に夜型の人もいますが、個人と、担当のまんが家によりますね。私は編集部でも朝型の方なので、早めに来て早めに帰ることを心がけてます。「ずっと張りついていないと描いてくれない」、みたいなまんが家も減ってきたので、この会社は勤務時間の自由度が高いこともあり、働きやすいです。
  • Q.まんがの「読み手」から「つくり手」側になって変わったことは?
    A.自分が担当している作品を「いかに世の中に届けるか」を日夜考えるようになりました。より良い作品になるよう、まんが家をサポートすることはもちろん大事なことです。ただ同時に、この出版不況の中で、「読んでもらう」ところまで持っていくことは同じくらいに大事なこと。書店の店頭で目立つにはどうしたらいいんだろう? SNSでバズるきっかけをつくれないか? この作品だからこそのおもしろいキャンペーンが何かできないか? ……素晴らしい作品を「つくる」だけでなく、「届ける」ことを同時に試行錯誤するようになりました。
  • Q.まんが家と信頼関係を築くために気をつけていることはなんですか?
    A.雑談を大切にすることです。自分自身の過去の恋愛話、トラウマ話、失敗した話、フェチ話……そうした実体験を、自分自身のすべてを作品づくりの糧にしてもらう姿勢で、「心のパンツを脱いで」まんが家に話す。で、まんが家が興味を持った部分から、作品がおもろしくなるヒントが見えてくることがあるのです。その積み重ねで、まんが家との信頼関係が少しずつ生まれていきます。

ジャーナリズム誌

  • Q.『週刊ポスト』や『SAPIO』では政治や経済の記事がありますが、学生時代に政治学科や経済学科で学んでいる必要がありますか。
    A.政治学科や経済学科の出身であることは必須条件ではありません。政治、経済に限らず、さまざまな分野について記事をつくる『週刊ポスト』、『SAPIO』では、幅広い知識が必要ですが、さまざまな分野に興味を持ち、学び続ける姿勢があれば、問題ありません。
  • Q.週刊誌の編集部に女性はどのくらいいますか?
    A.現在、社員編集者としては、『週刊ポスト』にひとり、『女性セブン』は3分の1ぐらい(6人)でしょうか。もちろん男性週刊誌でも、フリーの常駐編集者や記者の中には女性スタッフも多いので、女性は自分ひとりだけ、ということにはならないと思います。
  • Q.同じジャーナリズムでも新聞と違う週刊誌の魅力はなんだと思いますか?
    A.新聞では書けない事件の真相や裏側に迫れるというのが、いちばんの醍醐味だと思います。あと週刊誌は、1冊の中で政治、経済、芸能、スポーツから健康・実用情報、グラビアまで、本当に幅広いジャンルを扱っています。各編集者が自分でやりたいという企画があれば、どんなジャンルの記事でも担当することができる点が魅力ではないでしょうか。
  • Q.『週刊ポスト』の記事を読むと読者対象がすごく高いように思えるのですが?
    A.たしかにそれはあるかもしれませんね。若い世代が紙の雑誌を定期的に読む機会が減っているのも、そうした誌面づくりになっている一因かもしれません。とはいえ、その一方で、週刊誌の記事をネットニュース(『NEWSポストセブン』など)で配信した場合、男女問わず、幅広い世代の読者に読まれていることがわかります。編集部でつくったコンテンツを、どんな読者にどうリーチさせていくのか、今後の課題としてまだまだ試行錯誤を続けていきたいです。

ライフスタイル誌

  • Q.小学館のライフスタイル誌と他社のライフスタイル誌との違いを教えてください。
    A.小学館のライフスタイル誌は、小学館が学年誌からスタートしていることもあり、難しい内容も読者の方にわかりやすく伝えられるような誌面づくりを心がけています。そのため他社の雑誌に比べると、おしゃれなイメージ優先の構成ではなく、文字ばかりにならないよう、写真やイラストなどを有効に使いながら、より内容が丁寧に伝わるような誌面構成をしています。
  • Q.現在、雑誌全体の売れ行きが芳しくありませんが、ライフスタイル誌では、どのような対策をしていますか?
    A.確かに現在、雑誌の売れ行きは芳しくありません。そんな状況でも、ライフスタイル各誌は、魅力的な付録を付けたり、新しい特集企画にチャレンジしたりしながら、そのような状況を打破しようと努力しています。また、紙だけではなく、各誌ウェブなどのデジタルにも対応し、新しいビジネスをはじめています。さらに2016年10月、訪日中国人向けインバウンドサイトをローンチし、『DIME』、『サライ』、『ビーパル』などの魅力的な記事を中国語に翻訳して、中国本土で配信しています。
  • Q.男性向けの雑誌だと思うのですが、女性の編集者としてギャップはありませんか?
    A.たとえばアウトドアウエアのセレクトや、男性の趣味嗜好をベースにしたいときは、編集部員やライター、スタイリストなど、やはり男性スタッフの意見を聞くようにしています。ただ、企画を考えたり、ページを構成したり、編集作業自体には、男女差はそんなにないと思っています。親子向けの企画だったら、お子さんがいるライターにお願いするなど、なるべくリアルに実体験がある人や、経験があるスタッフたちのチカラを借りて、そのギャップを埋めるようにしています。

ファッション誌

  • Q.ファッション誌の編集者は最新トレンドを身に付けたり、外見に気を遣わなければダメですか?
    A.社外の人と会うときなどは、担当する雑誌の代表となるので、社会人として恥ずかしくないきちんとしたファッションを心がけます。ファッションが好きな人も多いのでトレンドを身に付けていたりもしますが、強制されているわけではありません。デスクワークのときなどはカジュアルだったり、すっぴんの日も実はあります。
  • Q.ファッション誌の編集をしていて、学生のときにこういうことをやっておけばよかった、身に付けておけばよかった、と思うことはありますか?
    A.出版社の仕事というのは、ほとんどの場合、特殊技能を必要としない仕事なので、何か特別なスキルを身につけておいたほうが職務上よかった、と思うことはなかったと思います。“就職”のための経験やスキルより、実際に仕事をするときに、自分の担当する雑誌や企画がどうしたら読者にとってより価値のある情報になるか、いいページになるかを突き詰めること、それに対して真摯に向き合えることのほうが、ずっと重要だと思います。あえて挙げるとすれば、女性誌に配属されると、あまり文章を書く訓練をしないうちから、少しずつですが文章を書くことになります。そのときに雑誌の文体や言葉のリズムがまったくわからないと、少し苦労します。そのため、好きな雑誌をたくさん読んでおくことが、やっておいたほうがいいことともいえるかもしれません。
  • Q.異動が多いようですが、どう感じていますか?
    A.私は4部署目なので、同世代の中では多いほうかもしれません。すべて異動希望を出していたわけではありませんが、どの部署も仕事が楽しく、飽きっぽい性格の私にはちょうどよかった気がしています。会社員としてというか編集者として、編集というひとつの仕事を深める根気と、どの環境へ行っても力を発揮して楽しめる柔軟性は大事だと思います。まわりを見ている感じですと、小学館はわりと「希望し続ければ一度は希望の部署に行かせてもらえる」環境だという印象です。
  • Q.「月に企画を20本出す」とうかがいましたが、どうやって考えるのですか?
    A.毎シーズン、ファッションの展示会や、化粧品の新作発表会というものがあり、そこから最新情報を仕入れています。また、毎月読者モニター会というものを開いていて、働く女性の生の声を拾ってそこから企画にしたり、友人との雑談などからもヒントを得ることもあります。

書籍編集

  • Q.新入社員は書籍に配属されますか?
    A.あまり例がないようです。経験からいって、いきなり単行本を1冊つくる、というのは難しい面もあります。まず、雑誌で多様な現場を体験し、多くの人に会い、間口を広げておくことが大切です。ただ、作家と付き合うという点からいうとコミックと共通するので、文芸への配属は可能性があるかもしれません。付け加えれば、総合出版社のメリットのひとつはいろいろな部署があること。早くから「自分の適性は…」などと決めつけないで、入社後に発見していけばいいのではないでしょうか。一方で、書籍は社内のどの部署の社員が企画してもよく、企画さえ通れば、辞書の部門から料理本や落語関連、ドリルなど、さまざまなジャンルの書籍を出すことも可能です。そこが小学館のいいところだと思います。そういう意味では、新入社員であっても書籍を出すことができます。それまでに企画力を養っておいてください。
  • Q.他社の子ども向けの図鑑や百科事典と比べて、小学館の本が優れている点はなんですか?
    A.図鑑は60年、百科事典は25年という長い歴史の中で蓄積されたノウハウ、信頼性、識者とのパイプがあります。それらを活用し、子どものものといえども本格的な内容にこだわり、最新情報を加え世に送り出しています。それが読者のニーズに合ったために、小学館の本は高評価を得ているのだと思います。長い年月を重ねないとできない本づくりのノウハウがあるのです。
  • Q.他の出版社と比べて、小学館の児童書の強味は何でしょうか?
    A.まず、『ドラえもん』や『ポケモン』『名探偵コナン』など、人気キャラクターの存在です。まんがやゲーム攻略本、アニメや映画の関連本はもちろん、絵本、知育・学習、趣味まで出版物の幅が広がります。また、学年誌や学習ものの分野で歴史と実績があるので、中身の濃い本づくりができること。さらに、書籍、雑誌、教育、辞典など、複数の編集部で連携した企画が生まれることなどです。
  • Q.ライトノベルならではの仕事のおもしろさって何ですか?
    A.同じくらいの重要度で、イラストと文章が存在していることでしょうか。たとえば、固い文章に固いイラストをつけることもできますし、逆に固い文章に柔らかい(萌え系の)イラストをつけることもできます。複数のクリエイターが組んでいるからこそ、作品としての仕上がりは千変万化する。それがライトノベルのおもしろさだと思いますし、プロデュースするライトノベル編集の仕事のおもしろさでもあると思います。
  • Q.アニメ化する際のライトノベル編集者の仕事を教えてください。
    A.たくさんありますが、基本は作家の代弁者であることです。原作の脚本への落とし込みや声優さんによるキャラクターの演技など、作家の代弁者として作品を監修していきます。もちろん作家が直接会議やアフレコの場に出られればベストですが、そうできない場合も多々あるので。悪い意味での伝言ゲームにならないよう、作品への理解度はもとより、作家との日々のコミュニケーションも重要になります。