新入社員
まさおか のぼる
正岡 昇
第二コミック局 少年サンデー
第二コミック局 少年サンデー
まんがが大好きで、念願の『少年サンデー』編集部へ配属。ヒット作を生み出す! という野心を胸に、骨を埋める覚悟だ。
まんがが大好きで、念願の『少年サンデー』編集部へ配属。ヒット作を生み出す! という野心を胸に、骨を埋める覚悟だ。
国民的な作品として幅広い層の読者から愛される『名探偵コナン(以下、コナン)』。『少年サンデー(以下、サンデー)』で連載中のまんがに加え、テレビアニメや劇場版など、さまざまなチャンネルで親しまれている。『コナン』の現担当編集者である安達 佑斗と、かつての担当編集者で、現在は立場を変えてクロスメディア事業センターの一員として『コナン』のテレビアニメや劇場版のプロデューサーを務めている近藤 秀峰に、長期に渡り第一線の作品であり続ける『コナン』の魅力やその秘訣を聞いた。取材は、今後『コナン』の担当編集に就任する可能性もある『サンデー』編集部の新入社員、正岡 昇が担当した。
青山剛昌先生と編集者の打ち合わせは物騒(!?)
- 正岡:
- 『名探偵コナン』の作者である青山剛昌先生とのお仕事の中で、何か特徴的な作業はありますか?
- 安達:
- それはやはり、トリック打ち合わせですね。まずは不思議な死体や不思議な殺人現場、不思議な暗号などのアイデアの種を集めて青山先生との打ち合わせに持っていき、トリックを決めていきます。そのトリックを元に、殺人現場、容疑者や登場人物などのストーリーをふくらませていく形です。
- 正岡:
- トリックの種はどのように集めるのですか?
- 安達:
- 日々の生活の中からです。「これをうまくやったら人を殺せそうだな」とか「これで死体を隠せるのではないか」という視点ですべてのものを見るのがライフワークになっています(笑)。あとは、職業によって異なる特徴的なことばやしぐさ、服装なども大事な種です。コナンくんがその人の何気ない仕草から職業をズバリと言い当てるシーンは、かっこいいですよね。そういう演出の一助となるようなネタ集めもします。とにかく作品のネタになりそうなら何でも。で、気になったことはとにかくノートにメモしています。
- 正岡:
- 殺人の方法や死体の隠し場所が書かれているノート……落としたらだいぶ大変なことになりそうです……(笑)。
- 安達:
- あと、実はトリックよりも頭を悩ませるのが、殺人の動機なんです。『コナン』はあくまでも少年まんが。ただ殺したいから殺した、という愉快犯や反省しない犯人、およびあまりにドロドロした動機はNGです。今までの作品でも後味が悪くなるような事件はひとつもありません。少年まんがなので、メインストーリーに集中できなくなるような凄惨な事件などはやらない、というのは、青山先生がとても気を遣われているポイントです。なので、毎回動機を探すのが本当に難しい。お金や恋のもつれなどはほとんどやり尽くされていますから。行き詰まったときは、青山先生と、『コナン』を一緒に担当している編集者の吉田と私の3人で、「どんなときに人を殺したくなるか」「こんな理由だったらぶっ殺したくなりますね」みたいなことを、夜中から朝までずっとファミレスで話しています。端から見たらかなりやばい3人組に映っているはずです(笑)。そんな打ち合わせも『コナン』ならではの特徴です。
- 正岡:
- そうした難しい制約もある中、長く親しまれるまんがをつくり続けられる秘訣は何だと考えていますか?
- 安達:
- 青山先生はまんが家の中でも特にキャラクターづくりが上手なかたです。『コナン』に登場するFBI捜査官の赤井秀一、私立探偵の安室透、「西の高校生探偵」の服部平次など、サブキャラでも世界中の読者が熱狂するような人気があります。また、青山先生は昨年、2017年に画業30周年を迎えられ、『青山剛昌 30周年本』が発売されました。その中のインタビューで、誰にも負けない自信のあるところは「ラブコメだね」と即答されていました。実際に新一と蘭以外にもいろいろなペアが登場していますが、そうしたストーリーも読者人気が高く、作品の大きな魅力になっています。第21弾の劇場版『から紅の恋歌(ラブレター)』も「ラブ推し」ですし、『サンデー』での記念すべき連載1,000話目でも、「ラブコメの一大イベント、高校生の修学旅行ははずせない」となりました。この修学旅行の話については、2年半の担当の中で、一番いい打ち合わせができ、最高のエピソードを生み出せたと思っています。読者の反響もよくて、アンケートも頭ひとつ抜きん出た1位でした。そういうふうに読者が「もっと読みたい!」と思うエピソードがどんどんつくられていくので、1,000話まで続いているんだと思います。
青山先生と劇場版製作スタッフをつなぐ、編集+クロスメディア
- 正岡:
- 私が『サンデー』編集部に配属されたことを友達に話すと、よく『コナン』の話題になります。そんな誰もが知っている看板作品の担当になったときの、おふたりの気持ちを教えてください。
- 安達:
- そのときのことは明確に覚えています。『サンデー』に異動してきて編集長に挨拶をしたら、「コナンの担当になってもらうからよろしくな」と言われて、まったく予想していなかった事態に身体が固まりました。小学生の頃から好きだった作品なので、ピンとこないというか…。私の同期が『コナン』の2代前の担当編集者で、彼の担当時代には他人事のように「コナン担当なんだ、すごいなー」なんて言っていたのに、まさか異動初日にそんなことになるなんて。人生何が起こるかわかりません。
- 近藤:
- 私は当時『サンデー』で高橋留美子先生の『犬夜叉』を担当していました。入社試験のエントリーシートに『めぞん一刻』が好きだと書いたくらいでしたから、高橋先生の担当を離れるのは寂しい気持ちもありました。しかし、巨匠ふたりを掛け持ちするなんて物理的に絶対無理なので、そこはもちろん気持ちを切り替えました。ただ、担当替えのタイミングで青山先生の前任担当者が他部署へ異動したため、細かくあれこれ聞いたりしづらい状況になってしまいました。だから、手探りで苦労しながらというところも多くありまして、とにかく無我夢中でしたね。青山先生にもご迷惑をおかけしたことがたくさんありましたが、何とか5年間担当させていただきました。今も立場は変われど作品に関わっているので、キャリアの半分以上が『コナン』とともにあります。
- 正岡:
- 『コナン』をよく知るおふたりは、劇場版やテレビアニメの製作で関わられるということですが、劇場版ではそれぞれにどういった役割の線引きがあるのでしょうか?
- 安達:
- 映画というのはまず、いろんな会社がお金を出して「製作委員会」をつくります。劇場版『コナン』では、その中心となるのが小学館。そして、小学館の劇場版チームの中心が近藤さんです。なので、関係各所からの要望を青山先生へ伝えるルートは「関係各所→近藤さん→私→青山先生」となります。先生からのリクエストで、「監督にこういうことを言いたい」「テレビ局のプロデューサーにこれを伝えて欲しい」ということがあったときなどは、私から近藤さんに伝えて、近藤さんから関係各所に伝えていただいています。
- 近藤:
- 劇場版に関しては、私がプロデューサーとして小学館側の中心に立ちます。流れとしては、まずは編集部の担当編集者ふたりと、テレビ局・アニメ制作会社のプロデューサーたち、青山先生と打ち合わせを重ねて、どのような映画にするかというアイデアを固めます。次に脚本家を選びます。その後、プロットというラフなストーリー構成が決まったら、脚本・シナリオづくり、絵コンテ、アニメーション制作と進めていきます。青山先生はプロットも、脚本も、絵コンテもすべてご自分でチェックされるのが特徴的なところですね。
- 安達:
- 青山先生はがっつりアニメーションに関わりたいというまんが家です。それも他のまんが家とは違うところなのかもしれないですね。もともとアニメーターになりたかったというご自身の背景もあって、劇場版のワンシーンの原画も「自分が描きたい」「自分の絵をスクリーンに映したい」とおっしゃるくらいの情熱があるかた。脚本ができる前のアイデアの段階でもレポート用紙にバーっとご自分のアイデアを書いて、「今回の見どころはこれだよ!」 みたいに先手を打ってこられます。それも週刊連載をやりながらというのは本当にすごいですよ。なので、編集者も同じく常に劇場版もにらみながらやらせていただいています。
- 正岡:
- 劇場版にかける先生の熱量を感じます。社外への調整も大変そうですね。
- 近藤:
- 劇場版のプロデューサーは、テレビ局、アニメ制作会社、原作元の小学館(私)と、あわせて3人います。当然それぞれの立場なりの主張があります。スケジュールや費用の条件、かかえている問題もさまざまです。そんな中、私は原作元である小学館の代表なので、編集部から「先生のために何とかしてほしい」と言われると、私から他のプロデューサーへ先生の意向を伝えながら調整を行うのが主な役割です。
- 正岡:
- 具体的にはどんな大変なことがありましたか?
- 近藤:
- 『から紅の恋歌』では、平次を久しぶりに劇場版に登場させて、青山先生肝入りの新キャラクターも出してもらいました。非常にシナリオもよくできて先生も満足されていたんですが、シナリオを絵に起こすときに、監督がこだわりたいところと、青山先生がこだわりたいところに若干のズレがありました。映画なので当然尺が決まっています。その尺に合わせてどこを切るか、両者の間で結構なせめぎ合いがありまして…。その苦闘の跡が、絵コンテに付けられた大量の付箋に現れています。この調整には編集部にも大いに助けていただきました。
- 安達:
- いえいえ、本当にありがとうございました。
- 正岡:
- みなさまの戦いの跡が…。逆に社外の方からの要望に対してはどのように判断されるのでしょうか?
- 近藤:
- 劇場版スタッフとの会議内容のすべてを持ち帰らずに、私が判断するものもあります。「青山先生は絶対NGだな」とか、逆に「喜びそう」というのは、元担当編集者としての経験からなんとなくわかりますので。もちろん、完璧ではないので編集部にも相談しますが、粗めのフィルターにはなっています。また、判断の基準で一番重要なのは、『サンデー』のメリットになるか、『コナン』全体のブランディングになるかどうか、です。クロスメディア事業センターの大切な仕事のひとつは、アニメや劇場版の盛り上がりを雑誌やコミックスの増売に繋げること。また『コナン』の場合はブルーレイ・DVDというパッケージも小学館がつくり、販売しているので、その売上を伸ばすことも念頭に置きます。そのために編集部と連携しながら、劇場版と雑誌・コミックスで相互に告知をしたりと、常につながりを強く意識した施策に取り組んでいますね。またパッケージを売るために、原作元というメリットを活かして青山先生の描いた原画の絵を使わせてもらったりもしています。
21作品を通して育んだ、劇場版「チームコナン」
- 正岡:
- 第21弾の劇場版『から紅の恋歌』では、5作連続の興行収入記録更新となり、過去最高の68.9億円を達成したそうですね。ヒットが続く理由はズバリ何でしょうか?
- 近藤:
- 青山先生は『コナン』を1,000話も描いてきて、それでも「あれもやりたい、これもやりたい」という意欲がある好奇心旺盛な作家。はばからずに言って、天才だと思っています。劇場版の打ち合わせなどで、編集者や脚本家、プロット担当者がアイデアを出していくと、先生は興味津々になって自分の引き出しをどんどん開けていくんです。最終的に先生から「このシーンをこうしたほうがいいよ」とさらにおもしろいアイデアが生まれて、それが絵コンテに反映されていく。先生がそのようにがんばってくださるから、スタッフたちも多くの人に見てもらいたいという気持ちが膨らんでモチベーションが上がる。このいいサイクルがあるからこそ、ヒットを続けていけるのだと思います。
- 正岡:
- チームワークはどうですか?
- 安達:
- 青山先生をキャプテンとして、「チームコナン」ができています。小学館、映画配給会社、アニメ制作会社、監督、それぞれの立場があって、主張もあります。ハードなこともたくさんありますよ。絵コンテの修正がなかなか終わらない中でスケジュールがギリギリとなり、アニメ制作会社は死ぬ気で描いているだろうし、宣伝担当は作品が大き過ぎて、メールと電話がパンク寸前になったりします。それでも関わっている全員が「チームコナン」の一員として、しんどいながらも「青山先生のため」「『コナン』を盛り上げるため」という大きな愛を持って仕事をしてくださっています。
- 正岡:
- 「コナン愛」がすごいんですね。劇場版シリーズの毎年のテーマはどうやって決めているんでしょうか?
- 安達:
- 近藤さん、テレビ局、アニメ制作会社の3人のプロデューサーが、時代性はもちろん、キャラ人気、青山先生が乗ってくれそうなテーマかどうかなどを考慮しながら5年くらい先を見据えて考えてくれています。
- 近藤:
- 昔は先生からの提案もありましたが、最近はプロデューサー側で集まって話をし、いくつか案をまとめてから提案するケースが多いです。編集部に「先生にそれとなく聞いてくれない?」とお願いをして、先生との雑談の流れで感触をみてもらう。そこで反応が良ければ「これでいこう」という風に少しづつ軸を固めていっています。2018年公開予定の第22弾『ゼロの執行人』は、安室透がメインキャラクターになります。「安室のちょっとハードな面が垣間見られる話にしてみよう」とか、「監督は新しい人だから演出が変わるかもしれない。だからこんな設定はどうだろう」とか、キャラクターや舞台設定などは常に検討を重ねています。ちなみに2019年公開の第23弾も当然のように製作は決まっていて、シナリオ打ち合わせもすでに行われています。
- 正岡:
- 今さらですが、『コナン』は毎年公開されているんですよね…。
- 安達:
- はい。もちろん映画もビジネスですから、赤字だと翌年はつくれません。
- 近藤:
- 第1弾『時計じかけの摩天楼』は立ち見が出るほど盛況だったそうです。そこから翌年、また翌年と繰り返しているうちに21年。配給会社の東宝からは「野球でいえば1番バッターとしてドラえもん(春休み公開)が出て、2番でコナン(ゴールデンウィーク公開)がきちっとランナーを進めて、3番のポケモン(夏休み公開)がつなげて、4番の妖怪ウォッチ(冬休み公開)でまとめる。1年を通した劇場版のサイクルができていてありがたい」と仰っていただけました。それらのひとつに『コナン』がカウントされていることは光栄です。収支がトントンの映画だったら公開が終わってから次回作の検討がはじまりますが、それだと毎年はつくれません。当たり前のように毎年劇場版が続けられるのは、他の映画の担当者からも「相当すごいことだよね」とよく言われます。
- 正岡:
- 今後『コナン』でやってみたいことはありますか?
- 近藤:
- 舞台はまだやっていませんし、歌舞伎もできるかもしれません。あとは、3DCGでつくられた『STAND BY ME ドラえもん』があれだけブレイクしたので、『コナン』でやるとどうなるんだろう、と気にはなります。まだまだ夢はありますね。
劇場版ファンを原作ファンへ。その先に見据えるのは『名探偵コナン』を親子2世代キャラクターに
- 正岡:
- 劇場版と『サンデー』の連載は連動があったりするのですか?
- 安達:
- 劇場版はオリジナルストーリーですが、『から紅の恋歌』は服部平次がメインキャラクターだったので、劇場版公開に合わせて『サンデー』の連載にもたくさん登場させました。大岡紅葉というキャラクターは、本来は劇場版のみに登場する予定でした。しかし青山先生と相談し、こちらも劇場版公開前後の連載に登場させて、限定キャラでは終わらせないようにしました。
- 正岡:
- 「このキャラなんだろう?」「大事なキャラなのかな?」と、劇場版が気になるしかけですね。
- 安達:
- 常に劇場版と連載を連動させた仕掛けは盛り込みたいと思っています。青山先生に「今年はどんなことをやりましょうか?」と話題をふって、先生の気持ちを盛り上げるのも私たち編集者の仕事です。また、青山先生もコミックスが売れればいいやという方ではなく、「映画公開中の『サンデー』にはどの話が載るか」という本来なら編集者が気にするようなところまで見てくださるかたなので、連載と劇場版の連動が実現してるんだと思います。
- 正岡:
- 効果のほどはどうですか?
- 安達:
- 正直にいうと、『サンデー』の部数が一番少なくて、コミックスの部数のほうが多く、さらに劇場版の動員人数はもっと多いんです。なので、劇場版のお客さんに仕掛けることで「『サンデー』がおもしろそう!」と思ってもらいたい、雑誌を手に取ってもらいたいという狙いがあります。
- 正岡:
- 『コナン』クラスの人気作品になると、まんがの原作を通らずにテレビアニメや劇場版だけで楽しんでいる人がいるということなんですね。
- 安達:
- はい、それが私の最大の課題です。テレビアニメや劇場版が人気なのはそれはもちろんいいこと。けれど、青山先生の最新話が掲載されているのに『サンデー』が読まれていないというのは、編集部としては大変悲しい。そこで雑誌で『コナン』の複製原画を購入できる読者全員サービスを企画したり、付録をつけたり、『コナン』ファンがちょっと本棚に飾っておきたくなるような表紙にするなど、雑誌ができるありとあらゆるプロモーションをしています。ある程度の効果は実感できるので方向性は間違っていないのですが、今はまだ濃いファン層が中心です。もう少しライトな層に向けても、話題づくりをしていきたい。劇場版の興行収入がとんでもないので、そこから考えるともっと『サンデー』も売れていいはずですから。
- 正岡:
- 近藤さん、まんが編集者と映画プロデューサーの両方経験されてきて、それぞれで大事にしていたことは何ですか?
- 近藤:
- まんがの担当編集者時代は、青山先生が全身全霊で作品に向き合っているのを身近で見ているので、アイデア出しなどで先生に貢献したい、喜んでもらいたいというモチベーションで仕事をしていました。先生から「おもしろい」と褒めてもらえると、たまらなくうれしかったですね。一方、映画プロデューサーの立場でいうと、関わっているスタッフは多いし、なんといっても500万人の観客がいます。その人たちにイヤな思いはしてもらいたくないし、喜んでもらいたい。劇場版20周年のときには、ここまで支えてくれたファンに感謝の気持ちをこめて何かやりたくて仕方ありませんでした。そこで宣伝や編集部の知恵を借りて、歴代劇場版19作の中から1話を無料で観られる入場者特典を企画したんです。それを喜んでくれたお客さんの声がSNSに上がっていたときは、やった甲斐があったと実感できて、非常にうれしかったですね。
- 正岡:
- 原作も1,000話達成、単行本も100巻が目前となって、劇場版も興行収入を更新中。一体『コナン』人気はどこまで続くんでしょうか?
- 安達:
- 今31歳の私が小学生のときに、テレビアニメも劇場版もはじまり、『コナン』ブームの直撃を受けました。私ぐらいの年齢の人が第1次コナン世代だと思っています。
- 正岡:
- なるほど。
- 安達:
- そして今、映画を観に劇場を訪れてくれるのは、20代前半〜中盤の女性が多いのですが、あと数年経つとその方たちに子どもが生まれ、子どもたちが『コナン』をまんがやテレビアニメで見るようになる。つまり『コナン』はあと少しで、親子2世代キャラクターに成長します。私は前の部署で『仮面ライダー』を担当していて、今の『仮面ライダー』は親子で楽しまれているのも知っています。そんなふうに劇場版『コナン』に親子がたくさんくるようになったら…。『コナン』はまだまだ巨大になる! と確信しています。そのためにも第1次コナン世代として、もっともっと頑張っていきたいですね。
正岡 昇『名探偵コナン』取材後記
『コナン』というと、『少年サンデー』を代表する大ヒット作品だ。アニメ化、映画化もされ、多くの人々にとって、『コナン』は身近な存在だろう。余談ではあるが、私が初めて手にしたまんがは『コナン』である…。
そんな大ヒット作の制作裏話。まず驚いたのは、その過密なスケジュールだ。大ヒットを記録した『から紅の恋歌』がまだ記憶に新しかったが、すでにインタビュー時には次々作が進行中であると。「チームコナン」という言葉がでてきたが、青山先生、担当編集者以外にも、アニメプロデューサー、監督など多くの人々が関わり、その【本気】が本作の大ヒットを生んだのだと改めて実感した。
一方で、国民的ヒット作の裏には少し悲しい現実も。『コナン』を読んだことはあるけど『サンデー』は…という人も実際少なくない。そんな中、全員サービスや記事、付録などで『コナン』を知ってもらう、より愛してもらうと同時に、『サンデー』への入り口となればいいという歴代担当編集者たちの言葉からは、【コナン愛】と【サンデー愛】が感じられた。
『サンデー』の一員として働く今、『コナン』はひとつの目標だ。コナンのように「多くのひとたちに愛される作品を生み出す」という野望を抱きながら、今後の編集者人生を歩んでいきたい。