制作

Q.制作という仕事に必要なものはなんですか?

A.制作に限ったことではないと思うのですが、「好奇心」につきると思います。制作に関する難しい知識はいくらでも勉強できますが、「これはどうやってつくっているんだろう?」と思える好奇心を持っていなければ、知識も身につきません。自社他社問わずいろいろな本をチェックしますし、本以外の商品(化粧品のパッケージや文具など)も自分が興味を持って、「どのように製造されているのか」と考えることは日々自然とやっています。

Q.制作局では最初どのような仕事をすることになるのですか?

A.制作に限らず営業部門全般にいえることなのですが、仮配属終了後、すぐに担当を任されます。自分がその書籍や雑誌を取り仕切っていかなければなりません。打ち合わせをする相手は編集長であったり、出版キャリアの長い強者ばかりです。そんな人たちと対等に話をして、きちんと雑誌・書籍を世に出していかなくてはなりません。勉強しながら、最前線で働くことになります。とてもスリリングで責任も重大ですが、だからこそ楽しい、と本心から思っています。

Q.制作として、どんな苦労があるのでしょうか?

A.まんがやドラマなどで出版社の仕事が描かれる場合、「原稿がなんとか上がった! ギリ間に合ってよかった」といった描写がありますが、実際によくある話だったりします。何気なく書店店頭に並んでいる本でも、大変な苦労を経て並んでいることが多いのです。編集部では、1ページ、1特集を必死に完成させるわけですが、我々制作部門は、完成した原稿を数万部~数十万部、もしくは100万部以上つくるのが仕事です。編集部とは大変さの質が異なりますが、実際にモノをつくり、発売日までに書店店頭もしくは読者に届けるということは、簡単なことではなく、いろいろな苦労があって達成しています。

Q.編集志望で入社したにもかかわらず、現在、制作の仕事をしていることに何か意図がありましたら教えてください。

A.編集者にとって制作の知識は必要不可欠だと私は考えています。1冊の本すべてを担う書籍編集はもちろん、チームプレーの雑誌編集でもひとりひとりがコスト意識や本ができ上がる仕組みなどについての理解を深める必要があります。極端な話をすれば、これから自分が出版物を世に送り出そうとするときに、何にどれだけのコストがかかるのか、どの部分にどんな紙を使うのがベストなのか、印刷・製本をどうするのかなどを理解したうえで企画・進行しなければ、本当にその本を「編集」したとはいえないのではないかと思います。当然、制作だけではなく、宣伝や販売などについても同じことがいえます。自分が担当した本はどのように宣伝したらいいのか、どのように販売したらいいのかなど、読者の手に届くまでのプロセスをトータルコーディネートできるのが理想です。編集は編集のことだけを考え、制作は制作のことだけ考えるというように狭い枠に留まるのではなく、ひとりひとりが「出版人」として必要な多方面の知識を活用できればいいと思います。

販売

Q.販売の仕事では数字を見ることが多いようですが、数字に強いほうがいいですか?

A.強いに越したことはないですが、電卓もExcelもあるので、むしろ結果として出た数字やグラフをどう分析して判断するか、そして何をするかのほうが大事だと思います。

Q.どれくらいの仕事を同時進行されていますか?

A.販売では、大きなジャンル(雑誌・コミックス・書籍)ごとに担当部署があり、書籍の中でも児童書と一般書で担当が分かれます。書籍は、各販売担当が数百点の初版・重版の部数決定から売上予測、断裁、絶版などの業務を行います。また、2~3か月先の新刊タイトルの相談を受けつつ、フェアなどの販売促進業務については、半年以上先の予定も立てますね。

Q.宣伝と販売の違いはなんですか?

A.1冊の本の部数を決めて配本するのが販売、その本の書店宣伝物や広告(プロモーション)するのが宣伝なので、大きい違いは取引先の違いだと思います。宣伝は広告代理店やデザイナー、販売は販売会社や書店。2016年に同じ部署となり、境目が少なくなってきている傾向にあります。

Q.返品された商品はどうなるのですか?

A.コミックスや書籍は改装して出庫しますが、残念ながら雑誌は一部のバックナンバーを除き、基本的に断裁されます。コミックスなどについても、在庫過多の場合は同様です。断裁された後は、もちろん、再生紙の材料となります。

宣伝

Q.宣伝物のデザインをするのが仕事ですか? 方向性を決めるのが仕事ですか?

A.実際にデザインをするのはデザイナーです。誰(=デザイナーなどのスタッフ)に依頼するのが適切かを考えて、対象商品をどう宣伝していくかデザインの方向性を伝えて、上がってきたデザインに対しても意見を出しながらつくっていきます。テレビCM、新聞広告、Web、書店の店頭宣伝など、どんな宣伝をしていくか、トータルプロデュースするのが宣伝の仕事です。その企画に合ったカメラマンやスタイリスト、ライターを決めて進めていく編集の仕事にも同様のプロデューサー的な能力が求められると思います。

Q.宣伝の1日のスケジュールを教えてください。

A.朝メールのチェックが終わると、お昼くらいから夕方くらいまで基本的に打ち合わせがほとんどです。デザイナー、広告代理店、印刷会社といった外部の方から、編集、販売、制作といった社内との打ち合わせまで、どのように宣伝していくか、どのような宣伝物をつくるかなどを話し合っています。その他にはデスクで宣伝物のデザインチェックをしたり、CMの編集作業の立ち合いにスタジオへ行ったりしています。

Q.宣伝の仕事で苦労することは?

A.雑誌の宣伝担当は、編集部に1人で対応しなくてはなりません。編集長からはときに過大な要求をされますが、当然、予算があるわけです。湯水のごとく宣伝費を遣うわけにはいきません。どのタイミングで、どのターゲットに、どのような媒体を使えばいいのか。最も効果のある方法を考え、提案することが求められます。また、コピーやデザインなど宣伝的観点から有効と思ったことを、編集長にはっきり主張しなければなりません。たとえ相手が大先輩であっても。

広告

Q.広告代理店の営業と出版社の広告営業の違いを教えてください。

A.広告代理店の営業は、担当クライアント(広告主)の要望に合わせて、マスコミ四媒体(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)などを組み合わせて提案をする、クライアント本位の仕事です。出版社の広告営業の仕事は、自社の雑誌やWebメディア本位の営業です。各雑誌、Webの特集やイベント、交通広告などを組み合わせた広告企画を考え、広告代理店やクライアントへ提案をしていく仕事になります。

Q.タイアップ広告の場合、どのくらい広告局が誌面広告づくりに関わっているのですか?

A.基本的にタイアップ広告の作成は編集部が行います。編集部がつくることが価値であり、お金になるのです。ただ、広告の営業担当が何もせず売っているわけではなく、広告内容のプランニングに関わっています。クライアントの要望を汲み取って最適な広告手法や媒体を提案したり、見せ方を考えた料金提案などをするので、内容の入り口は広告営業が考えていると言えます。

Q.紙とデジタルで、広告の売り方は異なるのですか?

A.いちばん違うのは、紙広告は掲載することがゴールであるのに対し、デジタルは掲載がスタートでゴールまでが長い。掲載後どのくらいの人に見られたか、どこに配信されたかなど掲載終了の1か月後まで目が離せないのです。そこが大変なところであり、おもしろいところでもあります。また、デジタルは数字主義。数字が結果を語り、数字がリピートにつながるのです。