第三コミック局 ビッグコミックスピリッツ

かつ りか葛 里華(3年目)

沢山の“好き”を携えて、今日もしゃべるよ、
どこまでも。

プロフィール

高校時代、演劇部に入ったことをきっかけに「私も物語に関わる人になりたい!」とマスコミ志望に。好きなまんがの影響で理系に進むも、小学館の理念に心打ち抜かれて必死に受験。ありがたいことに内定をいただき、採用面接時から志望のスピリッツ編集部配属に。現在、『トクサツガガガ』『猫工船』『ニコニコはんしょくアクマ』『宇宙めし!』『ヴィーヴル洋裁店〜キヌヨとハリエット〜』を担当。【好きなもの】宇宙:秋から始めた新連載の関係で、最近「宇宙」にハマっています! 理系時代の知識も活かせるし、何より宇宙から見る地球は本当に青くて綺麗で、心の底からロマンを感じます。

大学時代の4年間の“好き”が、今の私と今の仕事をびっくりするほど助けてくれる。

大学時代は、演劇・映画サークルに入って、本当にサークルに没頭する日々でした。私はサークルでは主に映画をつくっていて、学生映画ですが、編集などもしていました。スピリッツに配属され、自己紹介で映画の話をしたところ、『トクサツガガガ』の担当さんが、「作者の丹羽庭先生が、君の学生時代の映画の話を聞きたいと言っているので、今度打ち合わせに来ない?」と誘ってくださり⋯⋯。そのときの打ち合わせがきっかけ(?)で、なんと『トクサツガガガ』を引き継げることに! さらにそれだけでなく、話の流れで、私のサークル時代の友人と丹羽先生が、私の卒業大学である慶応の日吉キャンパスで、「クレイアニメ」をつくることになりました。当日は、現役の大学生である後輩たちも手伝いに来てくれて、朝から夜まで粘土を練って撮影して、本当に学生時代に戻ったようでした。まさかこんな風に、学生時代の活動と今の仕事がここまで直結するとは思わなかったので、本当にうれしかったです。その後、先生もこのときのことをモチーフにまんがも描いてくださり⋯⋯! 心から忘れられない1日になりました。あのときサークルを頑張ってくれて、本当にありがとう、私。

  • 『トクサツガガガ』の先生と一緒につくったクレイアニメのワンシーン。

  • 無事に『トクサツガガガ』まんが内に登場。右コマです。

惜しみなく、好きを貫き、さらけ出せる。それが私のいる「スピリッツ編集部」。

元々まんがが大好きな私。スピリッツ編集部に入って、まず最初に先輩に言われたことは、「沢山まんがを読みなさい」。家でずっと両親に「またまんが読んで!」と怒られていた私にとって、その一言はかなり衝撃でした。まさに青天の霹靂。そこから私の仕事は、自分が読んでいなかったスピリッツのまんがを読むこと。まさかこんな最高な日が来るなんて⋯⋯。その後、自分の担当を持たせていただけるようになって、作家さんとの打ち合わせがメインの仕事になりました。今でも毎回格闘なのですが、打ち合わせは本当に難しい! ただ、いつも思い出すのは、初打ち合わせ前で緊張する私に、編集長が言ってくれた言葉です。それは、「オープンハート」。自分から待っていても、何も始まらない。まずは「恥ずかしい」という思いなどすべて捨てて、「私はこんな人間で、こんなものが大好きです!」とさらけ出しなさいと。そこで初めて、向こうも心を開いて「本当にやりたいこと、好きなこと」を話してくれる。だから、自分の好きを偽ることなく、大切に。と教えてくれました。いつもこの言葉を胸に、打ち合わせに臨んでいます。きっと最初よりは、作家さん達も心を開いてくれている⋯⋯はず。

  • 担当作家さんが「心からやりたい!」と教えてくれたコラボカフェ。

  • スピリッツでは、こんな風に誌面に出演もします。

これから出会う、未知の好きたち。

3年目になって、この秋初めて「立ち上げ」の新連載を始めました。年末にも、もう1作品「立ち上げ」ます。「立ち上げ」というのは、自分の担当している作家さんと、一から一緒に連載に向けて企画するということ。具体的には、作家さんとネームを2~3話分作って、編集長たちに見ていただく⋯⋯という流れです。編集部に配属されてから、私はずっと、この「立ち上げ」をしたい!と思っていたので、ネームが通ったときは本当にうれしかったです。この2作は、どちらも作家さんの「好き」と私の「好き」が掛け合わさってできた作品⋯⋯だと思っています。1作目は、「宇宙」と「食」の話。元々ご飯まんがを連載されていた作家さんに、私が「宇宙が好き」という話をしたところ、「おもしろいですね!」とハマってくれて、この作品が生まれました。もう1作は、「魔法」と「裁縫」の話。こちらは、作家さんとお互いに好きな映画の話をしていたら、ふたりとも「ファンタジー」が好きということが判明(『ハリー・ポッター』の話ですごく盛り上がりました)。その作家さん、裁縫のお仕事をしていたので、そのふたつを組み合わせましょう!という話になり生まれました。こんな風に、これからも、作家さんの好きなものをしっかり聞きながら、自分の好きを見つめて、いろんな作品を作家さんと一緒につくっていければなと思っています。

おもしろ層Q&A

Q.もし、小学館に入社していなかったら、何をしている?

A.物語に関われる場所にはきっといると思うし、いてほしいと思います。リアルな話をすると、就活時代はマスコミしか受けていなかったので(かなり崖っぷちでした)、どこかに入れているといいけれど⋯⋯。ただ、まんがはどこにいても、何をしていても、ずっと読んでいると思います。

Q.もし、遊園地に速すぎるジェットコースターと、
遅すぎる観覧車しかなかったら、どっちに乗る?

A.遅すぎる観覧車。窓から見える、沢山の風景と人々をじっくり楽しみたいです。ひとりで乗るのもいいけれど、できれば誰かと一緒に乗って、流れていく景色に対して、あーだこーだ言い合いたいです。たとえば「あのカップル初デートかもね」とか。余計なお世話ですけど(笑)。ゆっくりだと、いろんな場面を見届けられそう。

Q.もし、手に入るなら未来が読める能力と人の心が読める能力、どっち?

A.人の心が読める能力! 昔からずっと欲しいなと思っていました。私がいちばん悲しいと思うことは、どんなに仲が良くて、どんなに一緒にいる相手でも、私はその人にはなれないことだから。なれない以上、いつも心のすれ違いが起こるので⋯⋯。でも、心を読めたとしても、本当にわかり合うことはできないんだろうな⋯⋯。

Q.おもしろい(interesting)ことと、おもしろい(funny)こと、
今どっちを求めてる?

A.おもしろい(funny)こと。おもしろい(interesting)ことも好きなんですけど、打ち合わせでいちばん嬉しいことは、私が話したことに対して、作家さんが笑ってくれるときなので。辛いこととか悲しいことがあったとしても、その話をおもしろい(funny)ことにできるくらい、ずっと笑って生きていきたい。

1日の仕事の流れ

  • 10時30分起床
  • 11時出社。本日のTo Doリストを書きながら、
    メール確認
  • 11時30分担当の作家さんから原稿が届く。
    トーンの貼り忘れなどをチェック
  • 13時週に一度の編集部会議。進行の確認
  • 14時作家さんと打ち合わせ。沢山雑談してます
  • 18時グラビア誌面用の写真セレクト。
    これだ!という最強にかわいい写真を選びます
  • 20時先輩達とサク飯(サックリご飯)に
  • 23時朝書いた“To Doリスト”がすべて終わっていることを確認して健やかに帰宅

発掘!おもしろ層

「可食シート」です! 担当作のコラボカフェで初めて知りました。もなかやパンにも印刷できることを知り、印刷技術のすごさに驚愕したと同時に、食べ物だけでなく、いろんな方面でコラボへの可能性が広がるな~と思いました。

3rd EYE サイト製作者は見た!

あのときの彼女、
そしていまの彼女。

2年前、新入社員だった彼女が自筆で採用サイトに書き記した文章が忘れられない。理由は、とても「まっすぐ」だったから。その文章は他人の目を気にしておらず、自分の気持ちに正直な言葉がとても生々しかった。その青臭い勇気に、大人の私が怯んだのをよく覚えている。入社3年目、経験を積んだ彼女は、いま自ら立ち上げた宇宙食をテーマにした「食まんが」を担当している。「読んだ人が『自分は世界にひとりじゃない』と思えるまんがをつくりたい」。2年前にそう綴った彼女の言葉が真実かどうか、それは彼女が担当するまんがを読めばわかるはずだ。そう思い、今日も私は神保町を後にする。(by ネコ偏愛者・制作会社ディレクター)