新入社員

かじ なつみ

梶 夏実

第一コミック局 Sho-Comi

第一コミック局 Sho-Comi

かつてリアル読者だった『Sho-Comi』編集部に配属され、自分にとって「神に等しい」作家たちの生原稿にふれられることに感動する日々。

かつてリアル読者だった『Sho-Comi』編集部に配属され、自分にとって「神に等しい」作家たちの生原稿にふれられることに感動する日々。

小学館の代表的雑誌のひとつである学年誌。現在は『小学一年生』と、全学年を網羅する『小学8年生』の2誌を刊行している。『小学8年生』編集長である齋藤 慎と、この雑誌の大きな特徴である付録の制作を担当している後藤直之に、伝統ある名前を引き継ぎながらも、子どもたちの世界に新しい文化や潮流を生み出すべく取り組んでいるチャレンジの数々を語ってもらった。取材は、自身も付録つき少女まんが誌『Sho-Comi』で編集をしている新入社員、梶 夏実が担当。

すべての小学生を読者層にした学年誌『小学8年生』誕生秘話

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現在、学年誌は『小学一年生』と『小学8年生』のみになりました。どうして『小学8年生』を発売することになったのですか?
齋藤:
『小学三年生』と『小学四年生』が休刊になったとき、私は当時の「中学年編集室」の一員としてそれぞれの編集部に在籍していました。休刊といっても数万人の読者はいるわけです。しかし当時は、何の手を打つこともできず、読者を置き去りにしてしまったという後悔がありました。そうした経験から、『小学二年生』が休刊になるときに、何かかわりになる雑誌をつくらなければ、という使命感に駆られたのがきっかけです。
:
それが『小学8年生』につながるんですね。
齋藤:
学年ごとの学年誌が出せないのであれば、学年を問わず、どんな小学生が読んでもおもしろい雑誌をつくりたい、と。そこで2016年7月に、『小学二年生 8月号増刊』としてトライアル版『小学8年生』を発売しました。そこで手応えを感じたことから、正式に『小学8年生』を出すことにしました。でもその段階で、「こんなタイトル、絶対に売れない!」と社内の一部から言われて、他のタイトルに変更されかけたんですよ。しかしこのタイトルのメッセージ性をどうしても大事にしたかったので、「他のタイトルだったら、私はやりません!」と言いながら丁寧に説明を積み重ね、2017年2月、無事『小学8年生』第1号が発売されました。
  • [雑誌タイトル『小学8年生』] あらゆる数字に変化する

    まずすべての小学生をターゲットにするタイトルとして「無限大」という案が浮上。「∞(無限大)」ならば、縦にすれば数字の「8」とも読める。デジタル数字の8は、塗り方によって0~9までの数字を表現することが可能なので、1~6年生までフォローできると考えた。いまだに「8年生って中学2年生のことでしょう?」と言われることもあるとか。

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そんなことがあったんですね! ではその『小学8年生』の基本的な編集方針を教えてください。
齋藤:
メインターゲットを小学2〜4年生に設定しています。今まで各学年にわかれていたときは、学習ドリルなどで学校の勉強をフォローするようなつくりをしていました。それに対して『小学8年生』では、付録と連動した記事を中心に、学校では教えてくれないような楽しい話題を伝えていこうという感じです。その世代が興味を持ちそうな情報に寄り添うよりも、「このくらい知っているといいよ」と、やや上から引っぱり上げるようなイメージです。予想以上に付いてきてくれる読者が多く、嬉しいですね。一方で、大人買いしてくださっている方もどうやらいそうな雰囲気です。
:
具体的にはどのようにして読者の興味を刺激しているのですか?
齋藤:
たとえば第4号では、遺跡や土器を特集しています。付録も「手作り土器キット」です。それを楽しく見て知っておくことで、実際に学校の社会科見学で博物館などに行ったときの予備知識になります。「潜在学習」って言っているんですけど、あらかじめふれていることで、その後もう一度目にしたときに、「コレ、見たことある!」という気持ちが湧き上がって、好奇心がより広がるはずなんです。
:
それって小学生のときだけじゃなく、中学生や高校生になってから出会ったとしてもいいですよね。もちろん社会人になってからでも。
齋藤:
そう、一度本の中で出会っておくことで、後の人生に大きな影響を与えられるんじゃないかと。記憶や興味のちっちゃな「釘」が刺さっていると、それがきっかけでいろんなものに好奇心が持てて、深堀りしようとするかもしれない。
:
将来を見据えて種を蒔きたい、ということですね。
齋藤:
もちろん時事問題も入れ込んではいます。今、興味を持ってもらいたいっていうものもあれば、知っておくと後から何か楽しい好奇心の入り口に繋がるものもある。小学館の企業理念にもある「種をまく」をまさに実践しています。
:
さまざまなジャンルの人にインタビューしているのも、「種をまく」ことのひとつですか?
齋藤:
なるべく人の顔、人の声を届けたいと思っています。学校では習わないことを教えてくれる大人たち。社会にはこういう大人がい るということを知ってほしい。
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プロフェッショナルの大人たちが、その技術を具体的に教えてくれるページもありますよね。絵の描き方など、大人が読んでもかなりうまくなりそうだなと感じました。たとえば、絵の概念のことがちゃんと書かれていて、「人が右を向いた絵だと過去を感じさせて、左向きだと未来を感じさせる」とか、そういう絵の教え方は小学校ではしませんよね。
齋藤:
まんまと罠にはまってくれましたね(笑)。登場していただいた先生が上手く教えてくれている、ということももちろんあります。と同時に、私を含め3人の編集者は、全員学年誌を経験しているメンバーです。小学生に向けての噛み砕いた情報の伝え方は、蓄積されたノウハウがあるので長けていますね。

制作と編集の連携が肝となる付録づくり

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『小学8年生』のいちばんの特徴は何ですか?
齋藤:
やっぱり付録です。付録で遊ぶことによって湧き出てきた興味を、本誌の特集企画でちゃんと補っていけば、楽しく読んでもらえると考えています。
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付録と特集企画が連動していることで知識が深まるというのは読んでいてとても実感しました。この2つは同時に考えるのですか?
齋藤:
付録には制約が多いので、付録が確定してから特集企画の細部を詰めていきます。付録は、ふわっとしたアイデア段階でも、制作の後藤さんに相談しますね。
後藤:
たとえば「黒板がやりたい」など、付録の形としてつけられるか分からないような抽象的な内容であっても、編集部からアイデアをもらってから、どうやって実現させていくかが私たちの仕事。編集部のイメージに合いそうな付録の形状を、こちらからも提案していきます。
  • [小学二年生 8月号増刊としてのトライアル版]
    付録/ヘンシンミニ家電!そうじ風機

    ひとつのファンなのに、風を送るせん風機になり、逆に風を吸い込むそうじ機にもなるという工作付録。消しゴムのかすを吸い取るのに最適なのでたくさん勉強しても大丈夫。これで子どもたちの学習意欲を向上できる!?

  • [第1号] 付録/手作りチョークと黒板ノートキット

    当初は小さな黒板を付録にしようと製作会社を探したが、安価な中国生産でもコストが合わなかった。しかし普通の紙に黒板になるような特殊印刷ができることを知り挑戦。コスト的に折り合わない面もあったものの、表面加工会社と密に打ち合わせをして、形を変えながら実現させた。

  • [第2号] 付録/消しゴムはんこ入門キット

    消しゴムに加えて、「楽ちんほりほりツール」と「図案付きトレーシングペーパー」も付けた、まさに入門編といえるキット。消しゴムを削る棒は、先が細い方が削りやすいという編集側の意見と、あまりとがらせては危ないと安全性を主張する制作側の意見があった。お互いの意見をすり合わせて良い形に着地させた。

  • [第3号] 付録/30倍どこでもけんびきょう、チェンジング3Dボックス

    夏休みの宿題攻略特大号として、視覚で学ぶふたつの付録をセットに。表紙の作例として掲載されているミジンコ写真は、齋藤編集長みずから家の近所の水辺から採取し、この付録を使ってスマートフォンで撮影した力作。

  • [第4号] 付録/手作り土器キット

    作例を埴輪や土鈴にすることで、単なるオーブン陶土ではなく、土器としてうまく昇華させた付録。「縄文ひも」も付けたことで、より縄文土器というフレーズを身近に感じさせている。きちんと教育的な見地に立って考えられたもの。

  • [第5号] 付録/文字の美楽レッスンキット

    水筆ペンで書くと文字が黒く現れて、乾くとすぐに消えるという特性をもった水半紙で、何度も気兼ねなく文字書きが練習できる。2020年の指導要領の改定で、書道の授業が1年生からはじまる。その授業は水筆ペンと水半紙を用いた授業になるかもしれないと言われている背景もあり、付録として採用した。

齋藤:
第1号では「手作りチョークと黒板ノート」を付録に付けました。本物の黒板を付けられればよかったのですが、コストもサイズも難しかった。ただし「どうやら紙に印刷することで黒板がつくれるらしい」という噂を耳にして、制作に相談してみました。そうしたらすぐにいくつか見本を用意してくれて。その中から一番書き味のいいものに決めましたね。
後藤:
このときは、『小学8年生』の制作担当が別の者だったんですが、紙の上にコーティングをしてチョークで書ける加工をしてもらったら、本当の黒板をつくるよりもかなり安く収まったと聞いていて、そんな印刷あるんですねと話したのを覚えています。私もその印刷方法は知りませんでした。そんな風に付録については、「黒板」というアイデアから、コストが厳しい、じゃあどういう選択肢があるか、みたいな相談を編集長と制作担当のふたりで詰めていきますね。
:
かなり商品開発に近い感じですよね。本当の黒板をもらうより、「黒板ノート」の方がずっとおもしろいと感じました。おふたりの 打ち合わせは密に行われているのですか?
齋藤:
そうですね。やりたい付録を実現するには、編集と制作との連携は必要不可欠です。
:
どの付録を見ても、もらって終わりというものはありませんよね。そこから自分で何か生み出すというか。
齋藤:
最初から、“チャレンジ付録”というコンセプトで進めてきました。だからすべて「キット」という形態にしています。チョークを手づくりする、消しゴムハンコをつくる、顕微鏡で何かを見てみる、土器をつくる。おもちゃとして与えるのではなく、自分の手でつくったり、アクションを起こしてもらいたい。それが肝です。というか、肝にしちゃったので、付録のアイデアをひねり出すのが本当に大変で、自分たちの首を締めている(笑)。

付録完成の裏にあるさまざまな仕事

:
制作は、出版社の中で特殊な部署だと思います。具体的な仕事内容を教えてください。
後藤:
編集に比べると、考えていることがかなり製造業に近いかもしれません。実際に付録の量産をはじめるときは、8〜10万個という数を製造する世界。10万個を1日5千個製造するのであれば20日間かかるという計算をしたり、工場のラインを何日間押さえられるかなどの確認をします。そこから最終的には、箱や中味が壊れずに書店の店頭に並んで、読者の手元に届くまでを考えなければいけません。そのすべての流れの品質管理を担います。
:
編集とはどのようなやりとりが行われるのですか?
後藤:
編集は、付録ができて本が発売されることがひとつのゴールになります。しかし制作は付録が読者の手元に届いて、安全に使ってもらえて初めてゴールになります。編集とは役割が違うので当然ですが、そうしたゴールの違いからくるお互いのイメージのズレを、なるべく埋めておきたい。打ち合わせの初期段階から、この箱はこの寸法にしないといけないとか、箱の厚みとか、読者の手に届いたときの具体的なイメージを編集に描いてもらうことも、私たちの役割です。
:
中でも、安全性が一番重要ですか?
後藤:
たとえば、第2号の付録「消しゴムはんこ入門キット」には、消しゴムはんこを削る棒が付いています。この先端をあまりとがらせると危ないから制作としては極力、丸くしておきたい。しかしそれだと削りにくいだろうと編集は言う。そうしたせめぎ合いはときどきありますね。小学生ならこのくらいの安全性で大丈夫だろうと思っていても、幼児である弟や妹が勝手に開けて「口に入れてしまった」、「食べてしまった」という可能性も考えなければいけない。判断の難しいところです。ただし、やってはいけないギリギリのところに魅力が詰まっていたりすることも多いということは理解できます。だから編集が持っているイメージを、可能な範囲でどう着地させるか、どう具体化してくかという仕事だと思っています。
:
読者本人だけでなく、周囲の子どもたちにまでとは……とても細やかな配慮だと思います。
後藤:
小学館が送り出すすべての付録は、事前に制作局から検査機関にサンプルを提出して、重金属が使用されていないかを確認しています。誤って食べてしまい、胃の中で溶け出してはいけないからです。こういったことまで考慮して付録はつくられていくのです。
:
他に付録製作には何社くらいの会社が関わっているのですか?
後藤:
流れにそって説明すると、まず付録製造会社に発注をします。同時に箱の仕様を決めて、箱の印刷をしてもらう会社に発注。またその印刷した紙を箱にするために型抜きする会社もあって、さらには箱に組み立ててもらう会社、箱に付録をセットしてもらう会社があります。ざっくりいえば4〜5社程度。それぞれの会社と同時並行で話を進め、発売に間に合うようにスケジュールも調整していかないといけないんです。最初の打ち合わせから発売までは半年くらいかかりますね。

言葉にならない漠然とした「感覚」も大切にしたい

:
私は小学3年生まで書道を習っていたので、第5号の付録「文字の美楽レッスンキット」の水筆ペンと水半紙にとても興味があります。文字を書いてはどんどん消えていくこの半紙は、特別なものですか?
後藤:
正確には「水筆用紙」といって、書くと墨汁で書いたように黒くなり、渇くと消える。半永久的に使用できる紙です。水筆ペンはそうでもありませんが、実はこの紙がかなり高価。雑誌本誌の紙と比べたら10倍くらい高いんですよ。
齋藤:
付録のアイデアは、「文字で遊べたら楽しいね」っていう会議での話をきっかけに、編集部員が文具の見本市で「水筆ペンがなんかおもしろそう」と見つけてきました。使ってみたら「なんか楽しいね」と。漠然としたイメージですが、理屈を超えた感覚みたいなものを大切にしていきたい。「なんか」という感覚を具現化していくのも付録づくりの醍醐味です。
後藤:
齋藤さんのその感覚的な「なんか」がなかなか曲者ですが(笑)。自分の中にある引き出しを総動員して、どうしたら現実の形にできるのかを考えるのはとても楽しいですね。「文字の美楽レッスンキット」を入れる箱はまだ製作途中。「箱の設計と中味のセットの仕方は、安全面を考慮するとこうなります」と、齋藤さんへ確認している段階です。(2017年10月取材時)
齋藤:
そんなところまで!?と思われるかもしれませんが。編集部としては、箱を開けたときに読者にはどう見えるか、という点も気にしています。
後藤:
付録においては制作がリードして進めますが、セットする作業などは意外と時間がかかるので、進捗などを随時共有しておきます。この箱の中で水筆ペンが箱のどちら側に固定してあるかなんて、正直あまり仕上がりには関係ないのですが、それでもなるべく情報を共有しておくことで同じ方向を向いて仕事をしていきたい。という私の気持ちの表れですね。
:
やっぱり部署を越えた信頼関係は大切なんだと実感しました。第1号や第3号は完売しているんですよね。
齋藤:
完売はうれしいことである一方、重版できないのが本当に申し訳ないです。本は重版できても、付録をつくるには時間がかかります。たくさん付録をつくっておけばいいけど、非常に調整は難しい。
後藤:
販売とは「今号の付録はこんな感じでいくらかかっています」という話をします。付録の制作費が高いときは余ってしまうと無駄なコストになってしまうので、部数調整は重要です。
  • [付録の箱の設計図] 付録の収め方まで確認

    制作の後藤さんから齋藤編集長宛の確認書。付録の配置だけでなく、セロハンテープの固定位置まで記載されている。

見えるカタチに詰まった、目に見えない二人の想い

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付録はご自分で使ってみますか?
齋藤:
もちろん使います。そもそも、連動特集ページでの作例も編集部内でつくっていますよ。付録を付けると雑誌が紐などで閉じられてしまうので、中味を見ることができません。その分、特に表紙での付録のイメージづけが重要になってきます。だから表紙は作例をメインに据えて、「表紙映え」を意識しています。たとえば「消しゴムハンコ」はそのまま写真を載せてもただの立方体の消しゴム。見映えもしないので、実際にハンコを掘って、捺したものをメインビジュアルに使いました。「手作り土器キット」も言ってしまえばただの粘土。製作後の埴輪を載せたほうがイメージが良く、引きがあります。第3号の「30倍どこでもけんびきょう」のイメージとして表紙に掲載した写真は、私がスマホで撮影したミジンコです。家の近くの水辺から獲ってきました。
:
ミジンコを探すところからですか!
齋藤:
もちろんすべて自分たちで!
:
私の隣の席の先輩が『Sho-Comi』の付録担当です。たまに原宿の雑貨店や100円均一ショップなどでどっさりサンプルを買い込んでいるのを見ています。『Sho-Comi』の場合は流行を大切にしていると言っていました。流行は意識されていますか?
齋藤:
意識としては『小学8年生』からムーブメントを起こしたいと思っています。今までの学年誌ではキャラクターをどんどん取り入れて流行にのるという流れもありましたが、今はそれとは違って、子どもに付録を使ってもらい、そこから派生する情報を提供することで、「頭が良くなりそうだし、なんか手を動かすって楽しい!」と思ってもらえる流れが生み出せるといいな、と。
:
私も『Sho-Comi』 でいつか付録担当になる日がくると思うのですが、付録のアイデアをどのように生みだしているのか教えてください。
齋藤:
普段の生活から、「これは付録になりそうだな」という視点を持つようにしています。土器の粘土も、もともとはオーブンで焼ける粘土が店頭で売られていて、「なんかおもしろいな」と思ったのがきっかけ。どこに何が転がっているかわかりませんし、それを付録にまで昇華させられるかどうかは、センスとかじゃなくて、ものに対する見方だと思います。結局は、私たちの仕事は、年がら年中そんなことを考えていないといけないから疲れるんですけど、でも楽しいからできているんでしょうね。
後藤:
制作の仕事でも近いところはあって、店頭で何かのパッケージを見たときに、「これは機械でセットしているのか、手でセットしているのか」と考えてしまいます。そういう知らない誰かがやってる絵を想像できるか、みたいなことを常に自分に課しているようなところもあります。
:
齋藤さんの「見立てる力」と、後藤さんの「制作魂」で『小学8年生』の付録が魅力的なカタチになっているんですね。
後藤:
私がよく人に話してることなんですけど、私は入社以来ずっと制作で、付録以外にも本誌の制作を担当しています。印刷も製本も自分が発注していて、過程をすべて見ているので、店頭に並んでいる本を見たときに、「オレがやったやつだ!」という喜びをすごく感じます。友達からも「お前は形になる仕事をしてるから羨ましい」って言われたこともあったりして。子どもに、「これパパがつくったんだよ」って自分の仕事を伝えられるのはやっぱり誇らしいです。
:
『小学8年生』の制作は後藤さんおひとりなんですか?
後藤:
2017年7月から体制が変わり、それまで別の課が担当していた原価計算と付録や本誌の制作を、同じ部署で行うようになりました。なので、『小学8年生』の制作担当は、私ひとりです。その分、齋藤さんと話す機会はぐっと増えました。いろいろとお話しした通り、ふたりで一緒に決めていくことがたくさんありますね。編集と気持ちをひとつにして、形にしている黒子がいるのだということも知ってもらえたらうれしいです。

梶夏実『小学8年生』取材後記

付録って特別だ。小学生の頃、ある少女まんが誌を買っていた私。中でも大好きな作品があって、その作品の付録がつくと飛び上がるほど嬉しかった。下敷きにタオル、ビニールバッグにランチボックス……。学校で遠足で、塾でおうちで、いろいろな場所でひとつひとつ大切に使った。子どもの頃に雑誌を買っていた誰にも、そんな思い出のひとつやふたつあるだろう。配属された『Sho-Comi』編集部では、毎号モノ付録をつけている。流行っているもの、読者が喜ぶものを狙いつつ、なんといっても外せないのが実現可能性。コストや安全面など、さまざまな側面で実現可能かどうかだ。そこで必要不可欠なのが制作の力。今回のインタビューでそのことを改めて実感した。制作は、おもしろいアイデアを実現可能にする部隊なのだ。
『小学8年生』第1号の付録は「手作りチョークと黒板ノート」だった。チョークをつくる! 誤飲しても人体に影響のない安全な素材でつくれるのか。おなじみの黒板をノートにする! それを可能にする素材はあるのか、黒板らしい書き味を残せるのか……。さまざまな課題を、編集と制作が一緒になってクリアしていた。子どもの頃、楽しんだ付録の裏側には、こんな大人たちの戦いがあった。わたしも、次の子どもたちに、こうして付録でおもしろがってもらうのだ。

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