04.これからの『CanCam』をつくる人へ

編集における基本の基

-新人の編集者は、まず紙の雑誌編集から始まることが多いと伺いました。それはなぜなのでしょうか。

高田

紙メディアの女性ファッション誌は、ひとりでは絶対につくれません。ひとつの仕事に、カメラマンやヘアメイク、スタイリスト、ライター、デザイナーや取材するタレント、芸能事務所のマネージャーなどかなりの人数が関わります。そんな中で、「読者たちはみんなこれを求めているんだ」という確信を、他者を巻き込みながら、読者に対して伝わるものに仕上げていく──こうしたディレクション能力、編集テクニックを身につけて欲しいと思っているからです。

-そうした狙いがあるのですね。

雑誌『CanCam』の絵コンテ
雑誌『CanCam』の絵コンテ。テーマやページ構成に加え、撮影小道具や美術のアイデアがメモとして記載されている。素案を考え、カメラマンやスタイリストなど、その道のプロとチームでイメージを共同制作していく。導き、実現する力が編集者には求められる。

高田

ネットメディアでライターをしている方から、『CanCam.jp』で執筆したいと連絡をいただくこともあります。中には、ネットから拾った写真や絵、テキストをコピペで勝手に使ってページをつくり、「私が書いた記事です」と自慢顔でいう人も、時々ですがいます。権利や倫理を無視すれば情報や記事として成立しているものもあるし、ニーズがあることもわかっています。でも、出版社の人間として、元となる写真や原稿をつくった人へのリスペクトと配慮を欠いてはいけないことを理解して欲しい。Webなら誰でも簡単にできるというのは大きな間違いです。写真1枚撮るにしても、みんながどれだけの時間とコストをかけているのか。編集者としてのスキルと知識、そして倫理を、身をもって知らなくてはいけません。そのためにも、これから編集者を志す人には、その基本的な考えを、雑誌づくりを通じて経験してもらいたいと思っています。

山野

私も経験上、高田さんがおっしゃるような編集スキルやディレクション力はとても重要だと思います。私自身、紙の雑誌からWebの仕事へ転身した身ですが、メディアが変わってもそうした「編集力」は、どんな場面でも応用が利きます。それと、スケジュール管理! これができなかったら終わります(笑)。締切がある中で、複数人が関わるプロジェクトを仕切る経験は、Webの制作でも非常に生きてきます。

高田

それから、『CanCam』には雑誌、Web、イベントに加え、単行本や写真集、ムック本の制作の仕事もあります。ベストセラーも多く出ていて、収益の柱のひとつにもなっています。紙、Web、イベント、単行本。ひとつのブランドの中で複数のメディアに横断的に関わっていくことにより、単体では得られない、視野の広さや柔軟な発想、さまざまなスキルと能力が身につくのではないかと思っています。

共に未来を創造しよう

-『CanCam』をよりよいブランドにしていくために、どのような人を望んでいますか?

山野

『CanCam』には、とにかくおしゃれな人! そして同世代の人たちの流行りにアンテナをはっている人が必要です。読者世代であることを武器にしながら流行の先端に身を置いて、自分のセンサーに反応した「好き」を「世の中のニーズ」とかけ合わせる。そうして「読者・ユーザーファースト」の『CanCam』で、おもしろい企画をたくさん生み出していって欲しいですね。

-とにかくおしゃれ(笑)、いいですね! 阿部さんは、いかがですか?

阿部

ブランド化されたことで、これからも社外の窓口として広告局が動く場面が増えると思います。広告会社、クライアント、制作会社、編集部の間に立ち、ブランドビジネスを実行していく。特に、従来の出版社の仕事内容にとらわれない、ブランドビジネスに興味がある人にとって、広告局の仕事にはいろんな可能性が開かれていると思います。『CanCam』ブランドを使って新たにこんなビジネスをやりたいと考えるのは、とてもやりがいがあっておもしろいはずです。

-最後に高田さんお願いします。

高田

『CanCam』は、これまでも変化し続けてきた媒体です。とにかく前へ前へとその時代の女性の声を聞き、読者たちの気分に寄り添ってきました。今までもこれからも、常に新しいことをつくり上げていく。だから、とにかく新しいことが好き、人を楽しませることが好き、そういう好奇心旺盛な人にぜひ来ていただきたいです。雑誌からひとつのブランドへ大きな変化を遂げた今、常識を打ち破り、新しいことに飛び込んでいける方に来ていただけるとうれしいですね。