04.これからの図鑑
これからの図鑑づくり
-紙の本独特なクラフトブックや、めくり仕掛け要素をふくむ『まどあけずかん』のような、新しいタイプの図鑑をつくったきっかけは?
根本
子育て中のお母さんから、「クジラが魚でないことをどう説明したらいいでしょうか」と聞かれたことがありました。クジラが魚だと思っている幼児が多いと知り、NEOよりも対象年齢が下の子どもたちにも、自然科学のことをわかりやすく伝えたい、という思いでつくったのが『まどあけずかん』でした。
-問いかけと答え、お話や場面の転換、窓をめくると展開があって、親子で一緒に読める絵本のような優しい図鑑ですね。
根本
親子で会話しながら窓をめくっていくと、魚とクジラの違いがわかっていく。子どもたちが抱く疑問にどんな方法で答えたら、親子の幸せなひとときが生まれるのだろうか、と考えてつくりました。
-日常的な疑問から出発しているのは『危険生物』と同じですね。
『まどあけずかん』
『クラフトぶっく』
坂野
つくるのが大変だっただろうなと思います。『まどあけずかん』は、印刷した2枚の紙を貼り合わせているのですが、1枚の窓を開くともう1枚の絵柄が見えるつくりになっている。だから開く窓部分をページの裏表でずらす必要があり、レイアウトが非常によく考えられているのです。編集者、デザイナー、イラストレーター、印刷、製本とそれぞれが頑張った結果だと思います。
根本
つくりたい図鑑のイメージを伝えるためには、つたないダミーを編集協力者や画家に見せて、汲み取っていただくしかありません。編集中はほとんど糊とはさみとカッターによる図工の時間。私のいすの下は、切り落とした紙くずだらけでした。
−本づくりには水面下での仕事がたくさんありますね。これからの図鑑の姿で思い描くものはありますか?
根本
紙の図鑑は成熟してきたので、デジタルでどんなものがつくれるのかは、やはりこれからのテーマであり、興味は強くもっています。一方で幼児に向く紙の図鑑だからこそ、マクドナルドのハッピーセットミニ図鑑企画が実現しました。紙もデジタルも、知識を伝える手段でしかないともいえるので、どちらがよいかはケースバイケースで考えるようにしています。
-たしかにいい本をつくるというだけでは、なかなか本は読まれません。
根本
そうだと思います。タカラトミーの自然科学関連の知育玩具に、NEO編集部は情報提供しています。おもちゃを入り口に、図鑑へとたどり着くこともあると思います。子どもたちに図鑑の楽しさを知ってもらうという目的を見失わずに、最適な手段でアプローチしていきたいです。
島田
メディアの変化の中で、より多くの人に知ってもらうためにこれからどこに向けて宣伝をするのかが課題になります。マスメディアからネットメディアに人々の関心は広がっていますが、テレビから次はどこへ向ければ効果的なのかを考えなければ、と思います。NEOのよさをこれからもどんどん高められるような露出方法を考えていかなければなりません。
坂野
個人的には、もっと軽い本にしたいですね。それでも図鑑は重い部類の本にならざるを得ないので、壊れにくい、楽しんで学び続けられる丈夫な本であってほしい。軽い本にするためには、より紙の軽量化を進める必要がありますが、ちょっとしたマイナーチェンジでも1年以上かかるので、じっくりと取り組んでいきたいです。
小学館だからできることを、一緒に
-最後に小学館を志望する学生に一言をお願いします。
坂野
小学館は風通しがよくてヨコ連携も取りやすい、いい会社だと思います。自分ひとりで仕事ができているのではなく、いろいろな人とつながって本ができあがるということを意識している人が多い。いつも誰かに支えられている、いわば家族のような感じですね。もちろん突っ走る人も中にはいますけどね(笑)。
島田
各々のセクションが集まりチームで動いてつくり上げていると思います。どの部署にいてもそれぞれの達成感が得られるのではないでしょうか。
根本
編集は文字の通り「集めて編む」仕事です。研究者や制作会社などの外部協力者はもちろん、社員同士も部署を越え、個性的な人材が連携することでひとつのモノをつくる。だから編集の先輩社員としては、おもしろいことを考え続けられる人、周りの人をぐいぐい引っ張っていける行動力のある人に入ってほしい。小学館にはそのおもしろさに応える知恵も経験もあります。思いが実現できる場所だと思うので、大きな夢をもって入ってきてください。