吉本 有李Yuri Yoshimoto
- 異動履歴
- 2019年入社/新入社員
画家の父のもとに生まれ、幼い頃から表現者の苦悩を目の当たりにしてきました。「何かを表現する」ために人生を賭ける人々が尊すぎて、それを支える仕事があると知った時は体に電流が走りました。なので就活は編集者一本。僕自身も狂言やらピアノやらを習っていましたが、いかんせん湧き出る情熱はなく。今の役割が楽しいです。
作家との共同作業。
やりがいしかないやろがい。
就活中、まんが編集者の仕事は「まんがを描く以外のすべて」なのだと、何度か耳にする機会がありました。実際に体感してみて思ったのは、うわ、事実だ!という事。毎週作品を完成させなければならない(しかもおもしろいものを!)作家という仕事は想像を絶する過酷さで……、常に作品に集中しなければ到底成り立ちません。つまり作家が安心して自分の作品に注力できるよう、それ以外の負担をすべて肩代わりするパートナーが編集者、という訳です。より多くの読者に届けるための施策を考えたり、読者の方々に最も刺さる展開は何かと必死で考えたり、デビュー前の新人作家と賞を狙うべくシビアな打ち合わせをしたり。人の人生を背負っているという感覚があります。これほど責任の大きい仕事で、新入社員としてまだまだ全然追いついていない部分は多いのですが、それでも「まんがを描く以外のすべて」という、大変さとやりがいが表裏一体になった仕事……、地道な作業の果てにある、人に作品を届けるという快感。この正解のない感じが楽しいんだと思います。先輩を見ていても皆、この快感に脳が焼かれています(もちろんいい意味で)!
私の1日
- 10:00
- 起床
- 11:30
- 出社、メールチェックなど
- 13:00
- 新人作家と次作の打ち合わせ
- 14:00
- 新世代サンデー賞の応募作品を読み、採点
- 15:00
- 記事ページのラフを切る
- 17:00
- 作家と社外で打ち合わせ
- 20:00
- デザイナーと電話で相談
- 21:00
- 新人作家のネーム(ラフコンテ)やプロットを読み、打ち合わせ
- 26:00
- 就寝
夢の中でもアンテナを。
映画を見たりまんがを読んだり。物語作りのためにそうしたインプットは欠かせない一方で、無意識に培われていく経験も大事だなと実感しています。それは「インプットしよう」と思ってやることだけではなくて、ちょっとしたイベントや流行りの展覧会に遊び感覚で足を運んでみたり、大学の同期と飲みながら仕事について聞いてみたり、そんな所にこそアイデアの可能性があったりします。企画ってつい、ゼロからイチを作り出すものだと考えてしまいがちですが、イチになる“タネ”が世の中にたくさん転がっていて、それを拾い集めるのが仕事なんだと考えると、電車に乗ること1つとってもちょっとワクワクしますよね。要するに四六時中アンテナを張っていないといけない、どこからが仕事でどこからがプライベートなのか境界線が曖昧な、「ワークライフバランス」ならぬ「ワークライフフュージョン」という趣ですが……。そもそもまんがという表現手段自体、日常を調理するからおもしろいのであって。どうあがいても分けられるはずがないよなー!
あらゆる作家を扱える、『才能の“ハブ”』を目指す。
編集部には本当にいろいろなタイプの方がいます。先日編集部の合宿で、先輩方の編集論を伺う機会があったのですが、まあ意見が割れる割れる! それぞれまったく違う方程式でいい作品を作り上げる様を見て、編集の世界には“正解らしきもの”すらないのだなと痛感しました。それでも、「作家の眠れる才能を掘り起こす」ために全力を尽くしている所は皆同じ。そこは個々人のもつ哲学であり、ポリシーであり、キャラクターであり……これまでの人生で培ってきたものをすべて使って、仕事をしています。
孤独に戦い心が折れた画家の父。編集者のような、制作を支えるパートナーがいれば絶対に結果は違ったよなと確信しています。十人十色で物事を進めていくこの“雑味”こそ、小学館の魅力だと思いますし、だからこそその中で、あらゆる才能を取りこぼさない、「才能の“ハブ”」でありたい。おそらく何度も失敗し絶望することにはなるのですが……僕の人生で培ってきたものを考えると、これ以上の生きる意味はないと思っているので、負けずに奮闘します!