『小学館の図鑑 NEO』編集者座談会
昨年に創刊20周年を迎えた『小学館の図鑑 NEO』。
学習図鑑シェアトップを走り続ける
図鑑編集者たちの想いとは。
対談メンバー
『小学館の図鑑 NEO』編集部の皆さん
Y.K
第三児童学習局
プロデューサー
1992年入社
Y.O
第三児童学習局
図鑑 デスク
2010年入社
Y.K
第三児童学習局
図鑑
2021年入社
S.O
第三児童学習局
図鑑
2019年入社
『小学館の図鑑 NEO』(以下、『NEO』)で
図鑑編集者として働く皆さんの図鑑との出会いを教えてください
幼少の頃から図鑑が好きでした。特に、保育園児のときに買ってもらった『小学館の学習百科図鑑』の「昆虫の図鑑」は3冊ボロボロになるまで読み込みました。黄色い背表紙が目印の、俗にいう“黄色い図鑑”です。「魚貝の図鑑」もお気に入りで、昆虫好き・魚好きの原点になりました。当時の図鑑は触れたらバラバラになってしまいそうな状態ですが、今でも実家で大切に保管されています。
私も黄色い図鑑の世代で「魚貝の図鑑」、もっていました! あの青いヤッコ(海水魚)みたいな魚が泳いでいる表紙をやっぱりボロボロにしながら、読み込んで。
ヤッコ! そうそう、「ニシキヤッコ」の表紙だったね!
ですよね! 私は実家が鰻屋を営んでいて鰻が身近にいる環境で育ちましたし、自宅では父が水槽で熱帯魚を飼っていたんです。横浜出身なので海や川で釣りもしやすかった。幼い頃から自然と魚に興味をもって、「魚貝の図鑑」も夢中で読みふけりました。魚好きが高じて、小学校では必然的に生き物係をやり続けました(笑)。
自分も幼少期に黄色い図鑑の「恐竜の図鑑」を愛読していました。
当時は、日本での恐竜研究の歴史はまだ浅く、1990年に最終巻の「第50巻」として、初めて恐竜の図鑑が登場したんですよ。
そうだったんですね。「恐竜の図鑑」をきっかけに昔のことや歴史にぼんやりと興味がわいて、小学校の中学年で歴史の授業が始まると教科書を開いて驚いたんです。旧石器時代や縄文時代のページを見て、「ん!? これはずっと図鑑で面白いと思っていたあれだ!」って。幼い頃に図鑑で見ていた風景が教科書に広がっていて、そこから考古学に目を向けるようになりました。
私は図鑑を引いて新しい知識を得ることや、図鑑で知ったことをきっかけに世界が広がっていく感動そのものから図鑑好きに繋がったように思います。
特別に好きなテーマがあったんでしょ?
宇宙が好きでした。星座や宇宙の図鑑をよく読んでいて、小学2年生のときに、しし座流星群を観たいと母に相談したら、「せっかくだから星がきれいな場所で観よう」と提案してくれたんです。平日だったので学校を早退する必要があったのですが、幸い担任の先生も「ぜひ行っておいで。帰ってきたら、流れ星のことをクラスのみんなにも教えてね」と快く送り出してくださって。さっそく当日に備えて、図鑑で持ち物や観測で注意することを確認しました。夜間の移動には懐中電灯が必要だとか、電球の明るい光で目がくらむと夜空の星が見づらくなってしまうので赤いセロファンで覆って光を和らげるといいとか、図鑑には役立つ情報が詰まっていた。おかげで当日はとてもすばらしい、たくさんの流れ星を生で観ることができました。
それは忘れられない経験になりましたね。
その日の流星群について模造紙にまとめて発表したら、クラスのみんながすごく喜んで聞いてくれたことも含めて、忘れられない経験になりました。そこから調べたことや知ったことを「伝える」喜びを覚えて、職業としての図鑑編集者への憧れが芽生えていったのだと思います。
私は2012年から『NEO』に携わっていますが、図鑑をつくるときには読むだけで満足してほしいとは思っていないんです。図鑑は出会いの場としての存在で、図鑑をきっかけに星空だったり昆虫だったり魚だったり「本物」を見て触れて……実物ならではの「体験」をしてほしい。小2の自分がしし座流星群に感動したように、誌面には収まりきらない地球の魅力を知るための好奇心の扉でありたいと考えています。その体験を手助けするために、『NEO新版 星と星座』と特典DVDでは天体観測や星座を撮影する際の工夫など、本物に触れるうえでの注意点なども、なるべく盛り込むように心がけています。
ほかの皆さんも職業として図鑑編集者を目指して、就活をされたのですか?
はい! 考古学を修士過程まで学び、自分の原点は図鑑だと考えていたので、図鑑をつくっている出版社を選んで就活をしていました。
私も大学で魚の研究の卒論を書いて、魚の図鑑をつくりたいと思って小学館を受験しました。面接では、学生時代に研究でしょっちゅう目にしていたトビウオの話をずっとしていた記憶があります。トビウオの飛びかたはこうで、食べかたはこうで、こうやって身を捌いて刺身は熟成させて食べるのがうまいんです、なんて話をとうとうと。
出汁(だし)もおいしいですよね。
そう、あごだし! やっぱり三拍子揃ったすごい魚なんですよ。
(トビウオ熱に圧倒されながら)あははは!
とまぁ、そんな調子でトビウオの魅力を力説していたら小学館へ入れてくれました(笑)。「魚のことだったら、この場では自分がいちばん知っている」という自信があったので、面接の場を支配する気構えで得意分野を語っていました。
私は2021年の秋に転職してきて、以前も別の会社で図鑑編集者をしていました。その後フリーランスで仕事をしていて、あらためて再就職を考えたときに幼い頃から好きだった小学館の図鑑をつくってみたいと考えたんです。
以前は大人向けに魚や鳥など生き物の図鑑をつくっていたのですが、小学館の『NEO』は資料としても活用していました。子ども向けの図鑑としてのわかりやすさがありながら、それほど内容のレベルが高かったんです。
『小学館の創立80周年記念として刊行され、昨年に創刊20周年を迎えた
『小学館の図鑑 NEO』。全26巻でシリーズ累計1300万部(2023年1月現在)を
突破し、学習図鑑シェアNo.1として子どもたちにも大人気ですが、
Y・Kさんは『NEO』の立ち上げから参加されたそうですね
小学館では黄色い図鑑の学習百科図鑑シリーズが1971年に創刊され、長らく競合出版社と2大図鑑時代を築いていました。ところが1999年にその会社から新シリーズが登場すると対抗できなくなってしまい、変革を求められることになってしまったんです。黄色い図鑑が発刊から30年ほど経って図版が古くなっていたこともあり、内容を刷新する必然性もありました。
そこで“他社よりも良い図鑑をつくる”ことを掲げて企画が始動。図鑑の編集作業が始まる2000年頃に他の編集部にいた自分に声がかかって、以来22年間、図鑑の編集部にいます。
『NEO』は2002年に「昆虫」「植物」「動物」「恐竜」を4冊同時に発売したのですが、当時、編集部員はたったの4人。編集長は担当をもたないので、私が昆虫と植物を掛け持ちしました。
1人で2冊……!(大きく目を見開いて絶句)
とんでもない作業量で、GWに誰もいない会社で昼夜ひたすら校正紙と格闘する日々。令和の時代では考えられない、それはそれは、悲惨な(笑)状況に陥っていました……。今ではプロデューサーの自分を含めて9名の編集者がいるので、担当を割り振る余裕はできましたね。
担当する図鑑はどのように割り振りをされるのですか?
基本的には個々のやりたい巻を尊重しますが、シリーズとして必要な巻は分担します。魚好きのY・Kは魚の図鑑をつくりたいだろうけれど、もう出てしまっているし、今は人数が足りないこっちを手伝って、というふうに。そうした場合はその分野を1から勉強して取り組むことになります。
入社して早々、「岩石・鉱物・化石」(2022年発売)のチームに加わって岩石パートを任され、表紙も担当しました。
自分は配属されたばかりでまだ担当も決まっていませんが、Y・Kさんが担当された「岩石・鉱物・化石」はぜひやりたかったなぁと、魅力的に思いました。考古学で石器を研究していたので、自分の研究テーマに近いんです。
それなら、S・Oは「岩石・鉱物・化石」のポケット版(『NEO POCKET』シリーズ)を担当したらいいんじゃない?
特に岩石は持ち運べるポケット版があると便利だと思う。
わっ! デビューが決まりました!
釣りで川へ行っても河原に石がいっぱい転がっているので、手元に図鑑があったらいいですよね。今回、岩石を担当したことで今までスルーしていた足下の石が気になって、気になって。
あぁ、その感覚とってもわかる!
川へ行くと忙しいな、という感覚になりました。川によって転がっている石も違うので、どういう石でその土地が成り立っているか、興味が尽きないんです。魚への熱量にはさすがに及ばないかもしれませんが(笑)、知識が深まったぶん、石ががぜん面白くなったのは間違いないです。
図鑑編集部にいると、ほかの人が担当している巻も端から端まで目を通すんです。校閲のための回覧なので大変な作業ではありますが、どんどん身の回りの世界に詳しくなる。愛情も深まりますし、目に映る世界の解像度が上がっていく感じがするんです。
そうそう。歩いていても足下の花や虫が何かわかるようになるから、ついつい注目してしまうし。
朝、通勤途中に出会ったイモムシの写真を撮ってきて、「こんなイモムシがいたよ。なんの種類だろう」と見せ合ったりして(笑)。図鑑編集部の日常はハマる人にはすごくハマると思います。
気になるイモムシを撮っちゃう図鑑編集部の日常、自分にもそういう習慣があるのでわくわくします。
「イモムシとケムシ」(2018年発売)として図鑑化されましたね
イモムシは図鑑をつくるために担当編集者が編集部で大量に飼育していたので、愛もひとしおなんです。
その担当編集者は脱皮のシーンを図鑑に載せたいと思って、ずっと動画を撮っていたんです。ところが生き物相手なので、よりによってカメラのメモリが途切れたときに脱皮してしまって「チキショー!!!」なんてことも(笑)。
あの画は飼育していないと撮れなかったですよね。
“イモケム”はそういった担当編集者の挑戦も含めてつくられた図鑑なんです。
図鑑はテーマごとにつくりかたが全然違うものの、それぞれに物語があって涙なしには語れない……。
うんうん。図鑑はつくるのに時間もかかるんです。昆虫の標本でも1点、1点撮り下ろしてゼロからつくり上げるので、撮影だけで数年かかりますし。『NEO』シリーズではありませんが、『小学館の図鑑Z 日本魚類館』は完成まで7年かかり、15年かかってもまだ制作中の図鑑もあります。
(息を飲んで)そんなにも膨大な時間が……。
通常、1巻に3年ほどかけています。自然相手の撮影となればタイミングを逃してしまうと1年先まで撮影ができませんし、『NEO』ならではのこだわりもあって時間がかかるんです。たとえば、星座の写真は雲のない晴天が当たり前だと思われていますが、あれだけの快晴は自然ではなかなか出会えない。CGで星空を再現して紹介するほうがはるかに楽なのですが、地平線と一緒に星空を映すことで星座のリアルな大きさを伝えたり、本物ならではの星の光や色などを読者に感じてもらいたいので、『NEO』では自然の星空にこだわって撮影しているんです。88星座でそれをやるので、それは時間もかかりますよね。雲がなくなったと思ったら飛行機が飛んできたりして、「うわあぁぁぁぁ~!!!」って、やり直しです。
植物などにしても、図鑑に載っている美しい花やきのこを見つけてくるのはものすごく大変。
雨が降ったりしたら、きのこは一瞬で生えてしまいますものね。
だから担当編集者は全国各地の協力者から情報をもらって、最高の瞬間を狙うために即カメラマンと撮影に向かうんです。山で採取したきのこをすぐに撮影できるように車の後部がスタジオになっていて、「次は〇〇のきのこを撮るから、いちばんかっこいい個体を採ってきて」とカメラマンに言われるのですが、虫食いやちょっとヒダが欠けているとか、なかなかかっこいい個体が見つかないらしいんですよ。『NEO』のNには“Nature:自然と生物”の意味が込められていて、「本物の写真」にとことんこだわって苦労をするところです。昆虫でもいちばんきれいな角度、ライティングで最新の技術を用いて撮る。たとえば、このチョウも(図鑑を開きながら)
出た! このページ!!
「アグリアス」というチョウなのですが、本来の色がなかなか出ないんですよ。どうしても色が出せなくて、監修の先生が「この図版では納得がいかない」と何度、決裂しかけたことか。
(のぞき込んで)いかにも出なさそうな色をしていますね……。
このページだけ特殊なインクを使ってようやく「本物の写真」に。監修の先生と「出ましたね!」とアイコンタクトした感激が忘れられない。これだけきれいにアグリアスの色が出ている図鑑は世界中探しても、ほかにありませんよ。
読者から「『NEO』は写真がきれい」という声が寄せられるのもうなずけます
色1つとっても真摯に、納得できるまで粘ります。『NEO』では分類にも真摯に、分類体系に忠実に添ってつくられているんです。昆虫の図鑑であれば、人気者のチョウやカブトムシから始まるところを、『NEO』ではトビムシなどがトップを飾ります。
しぶいですよね(笑)。
誰も知らないような地味な昆虫から始まるのですが、あえてそうしています。原始的な形を残すトビムシから進化にそって、トンボやバッタ、セミなど古い昆虫が出てきて、カブトムシは真ん中あたり、チョウは最後のほうです。「子どもたちにいちばんの人気者が後ろにきていて大丈夫? これじゃあ売れないんじゃない!?」という議論もあったんです。でもそこは1956年から図鑑をつくり続けている重みといいますか、「小学館の図鑑だから、分類に忠実にいきましょう」と。進化と分類に敬意を払ったうえで、面白いエンターテインメントを盛り込むことを基本姿勢としています。
私が担当した「恐竜」でも人気者のティラノサウルスやトリケラトプスなどから始めるのではなく、原始的なトカゲみたいな恐竜から始まります。恐竜の図鑑は人気順、エリア順、時代順など分類もさまざまですが、『NEO』の精神としては進化の歴史がわかる系統順なんです。
そこは大人の図鑑や専門書にも通じますね。子どもの頃に体系的な知識が身についていれば大人になってからもスッと学びに入れるし、応用も利く。長く自分の中に生きていく図鑑だと思います。私が小学館の図鑑や『NEO』を好きなのは、子どもへ向けて真摯に学問的なことも噛み砕いて伝えていこうという意思が感じられるからなんです。
その分野の世界観を子どもたちに感覚的につかんでもらうことは、何よりも大事だと考えています。
図鑑のエンターテインメント性という点では、「革命的図鑑」としてクイズ番組などでも取り上げられ、図鑑ブームの火付け役となった『くらべる図鑑』(2009年登場)など、関連シリーズも続々と誕生しています
さまざまな生き物や乗り物の大きさや速さなどを比較する『くらべる図鑑』は担当編集者が当時、図鑑を何冊も経験して、新しい角度から図鑑をつくってみたいと模索する中で生まれました。『まどあけ図鑑』(2017年登場)は幼年向けの図鑑を立ち上げたいという、担当編集者の思いから。方向性については「今売れている全種類図鑑がいいんじゃないか」「英語を併記した図鑑はどうだろうか」など長年の議論の末、「めくって遊べる“まどあけ”は小さな子どもにとってわくわくする体験だろう」と着地しました。
あくまで主軸は『NEO』で、日常業務の余力があって生まれるシリーズではありますが、関連シリーズから『NEO』の読者になるお子さんも多いんです。その意味では、いかに子どもたちの溢れる好奇心を図鑑の核心部へ導けるか、そのための関連シリーズづくりでもあります。
「ハッピーセット®」(マクドナルド)のためにつくられたオリジナルのミニ図鑑や業界初のカメラ付き生き物図鑑タブレット『小学館の図鑑NEOPad』(タカラトミー)など、『NEO』の世界へ繋がるチャンネルはさまざまあります
ありがたいことに、いろいろな業界の方から図鑑とコラボしたいというお話をいただけるようになりました。2021年にオープンした体験型施設「ZUKAN MUSEUM GINZA powered by 小学館の図鑑NEO(ずかんミュージアム銀座)」もその1つです。小学館は紙の図鑑を65年以上やってきましたが、ついに図鑑が紙から旅立っていきつつあります。
編集部でも、図鑑の未来としてデジタル化は非常に可能性のある分野だと感じています。ずかんミュージアム銀座を皮切りに、たとえばメタバース空間などで図鑑らしい電子企画をどこまで実現できるか、方向性の模索に熱を注いでいるところです。
探究する力はもちろん、ジャンルに偏ることなく、幅広い分野へアンテナを張ることも図鑑編集者として大切なんですね
校了時に編集部全員で新しい巻を回覧することを考えても、自分が興味のある分野だけでなく、その周辺にもなんとなく興味をもてる、視野を広げられる人は編集者に向いているんじゃないかなと思います。
そうやって何にでも興味をもってどんな経験をしても役立つのが、図鑑編集者の仕事の面白さの1つだと思います。
そう、何でもいい。どんな図鑑の担当をやっても、そこには奥深い世界が待ち構えていて、気がつくとズブズブと……。
手探りから始めた図鑑ができあがると自分の分身、わが子という感覚になってきますよね。
なってくる。そこまでがんばると、不思議なことに担当者のY・Oが月に見えたり、Y・Kが石に見えてきたりするんですよ(笑)。そうなってくると“本物”なんです。
恐竜の復元画を例にとると、絵を描いてもらっている間に新説が出てきたり、新しい恐竜が発見されたりすることは、実はよくあるんです。図鑑の制作中はもちろん、完成後も研究の最新情報にはアンテナを張り続けています。
図鑑は完成しても研究は続いていく。Y・Oは毎年のように古生物学会に行って、最新の情報を集めています。いずれ訪れるだろう新版の出版へ向けて、携わったテーマは以後、日常の生活と直結していくんです。多方面へ関心を保ち続けるのは大変そうに感じるかもしれませんが、図鑑編集者をやっていると、そんな生活にどんどんのめり込んでいきます。
残念なのは、図鑑編集者という存在がそもそもあまり知られていないことです。大学生や大学院生と話すと「そういう仕事があるんですね!」とよく驚かれるんです。生物を愛する人たちがその好奇心を生かせないのは本当にもったいない。「出版社には図鑑編集者という仕事があるよ」ということを、就活中の学生さんに知ってもらえたらいいなと思います。
図鑑編集部に新しい仲間が加わるのを楽しみにしています!
新入社員が図鑑編集部へ配属されることは難しいのでは?
それは聞いていたので覚悟していましたし、新入社員がすぐにどうこうできる編集部ではないというのも、今になればわかります。自分は『コロコロコミック』『てれびくん』で3年経験を積んで図鑑編集部へ移りましたが、参考文献で勉強し、知識やノウハウを蓄えて誌面に反映する編集者としての基本を身につけてからの配属でよかったと思っています。
私は入社してから2年間、宣伝部で経験を積んでから図鑑編集部へきました。まさか出版社で本以外のものをつくるとは思っていませんでしたが(笑)、TV CMや広告、イベントに携わることで培われた視点は図鑑にも大いに生かされています。編集者は良い本をつくるだけが仕事ではなく、売ることも大切な仕事です。『NEO』では幼少の頃からシリーズを愛読してくれていた芦田愛菜さんに「先輩読者」としてCM等に出演していただいていますが、このアイデアも宣伝部での人脈があったから実現できたことなんです。
私は入社9年目にようやく図鑑志望の夢が叶った。幼児誌の『めばえ』と『幼稚園』に4年ずついて、『きかんしゃトーマス』や付録の担当で本づくりの基礎を学びました。小学1年生以上を対象とした『NEO』とは関連がないように思われるかもしれませんが、ポケット版の「星と星座」に収録した手づくりの星座早見は幼児誌の組み立て付録のノウハウが土台にありますし、当時の人脈があったおかげで関連シリーズの『クラフトぶっく』(2005年登場)も生まれました。のりやはさみをほとんど使わない工作ブックなのですが、付録でおつきあいのあったクラフト作家の方から昆虫作品の持ち込みがあって実現したんです。第1弾の「りったい 昆虫館」の評判がよく、「どうぶつ館」「恐竜館」……と、20年近くシリーズが続いているロングセラーとなっています。
やはり最初は昆虫なんですね
小学館から第1号の図鑑が出た1956年から昆虫はいちばん人気なんです。昆虫は子どもたちの永遠の興味の対象なんですね。ちなみに最初のシリーズは昆虫と並んで植物の図鑑が人気でしたが、今は入れ替わって昆虫と恐竜が2トップを張っています。