『美的HEN』プロジェクト
メンバー座談会

『美的HEN』プロジェクトメンバー座談会

局の垣根を超えた新たなチャレンジ『美的HEN』。
立ち上げの裏側を語り合う。

『美的HEN』プロジェクトメンバー座談会

『美的HEN』は、22年前から女性の美を発信してきた『美的』と、17年前からメンズ美容に取り組んできた『DIME』がタッグを組み、ジェンダーにとらわれない美容情報を配信している社内横断プロジェクトです。

2023年6月に新しいWeb
企画『美的HEN』が始動しました。
局の垣根を超えた新プロジェクトということで、
まずは皆さんの普段のお仕事を教えてください。

第一ブランドメディア局「美的ブランド室」所属で、『美的.com』の編集長をしています。
第一ブランドメディア局は女性メディア局という名称でしたが、2022年に現在の名称へ変更となりました。

同じく第一ブランドメディア局「美的ブランド室」所属で、『美的』の副編集長をしています。
紙に軸足を置きながら、Webの企画も担当しています。

第二ブランドメディア局「ダイム編集室」所属で、『DIME』の編集長を務めています。
現在は雑誌『DIME』とWebメディア『@DIME』の両方を担当しています。

入社2年目です。新卒で広告局へ配属されました。
『美的HEN』の立ち上げからプロジェクトに加わり、媒体担当として携わっています。

『美的HEN』は『DIME』×『美的』のコラボとなりますが、
両誌のコラボは以前にもあったそうですね。

『DIME』では2006年から「男前プロジェクト」と題して、男性美容企画をスタート。継続的にメンズビューティーの発信をしてきました。家電系に強い『DIME』の特性を生かして、シェーバーなど美容系ガジェットの特集から始まり、コスメなども紹介するようになってきた。そこで、美容誌でブランド力を確立している『美的』とぜひコラボしましょう、とタッグを組んだのが2019年から始まった『メンズ美的』です。『DIME』本誌のスペシャル企画として5月号、8月号、12月号に掲載されました。

2019年当時は広告の立場で、『メンズ美的』の企画に参加していました。今から4年前ですが、当時は美容に積極的な男性俳優さんが本当に少なくて……。興味をもって出演してくださる方と出会うまで、時間がかかりました。

えっ、今は美容男子もたくさんいるのに!

コスメ業界としては“メンズコスメをこれからどんどん出していきましょう”と盛り上がっていたけれど、一般社会の感覚としては、まだそこまで追いついていない状況でしたね。

『美的』としても、それまで女性だけで誌面を構成していたので、男性だけが登場する美容企画では読者層と縁遠くなってしまうようにも感じて、誌面を工夫しました。女の子たちにとって、“彼にギフトを贈る”“彼をキレイにしたい!”といった切り口だったら、メンズコスメをより身近に感じて読んでくれるのではという狙いで、「シェア美容」を打ち出して桐山漣さん、土屋巴瑞季さんにカップルとして登場していただいたりしましたね。

2023年の今、『美的HEN』としてふたたびコラボした背景は?

ありがたいことに、クライアントさんが「ぜひまた『メンズ美的』をやりましょう」と提案してくださったんです。

社内的には、第一ブランドメディア局、第二ブランドメディア局と名称が変更になったところで、局の垣根を超えた新たなチャレンジをしていこう、という動きがありました。ブランドメディアの次のステージとして、異なる特性をもった『美的』と『DIME』をかけあわせて、魅力的なコンテンツを生み出していこうとする取り組みです。

毎月会議を開いて、どう形にするか、たくさんディスカッションしましたね。

キャッチコピーは「美容を楽しむすべての人へ」。
トップページを男女のモデルが飾っていますが、インパクト抜群な『美的HEN』の名称が目を引きます。

候補は他にもあったんですが、商標の問題があったりして、なかなか“これ!”という案が見つからなかった。

「美的カレッジ」が有力候補でしたね。

そもそも、なぜ『メンズ美的』として再コラボしなかったのか。クライアントさんとコミュニケーションをする中で、“商品を紹介するにも、ジェンダーを強く打ち出すのは今っぽくないな”と気づきを得たんです。

広告としても、メンズ、レディースとばっさり区切るのは時代にフィットしないかもって。

『メンズ美的』はわかりやすいけれど、他に何か良い案はないか模索しました。
『DIME』と『美的』と広告で10人くらいが会議室に集まって、ちょっと煮詰まっていましたね。

その“シン……”とした重めな空気の中で、『美的』の編集長に「若い子、Z世代は何かない?」と聞かれて、検索をたくさんした結果、「HEN」が出てきたんです。

“う~ん”と悩みこまずに、
その場で行動したんですね。

はい!
新人の自分へ流れが来たことがわかったので、“どうしよう、やばいっ”と内心ドキドキ焦りながらも、自分に求められていることに応えたくて、急いで検索しました。最初に挙げたのは英語の「they」です。SNS上で広く知られている、メンズやレディースのくくりがない、性別を特定しない言葉だと知っていたので提案しました。でも即「なし!」と却下されてしまって。すぐまた検索をかけて、スウェーデン語の「hen」へたどり着いたんです。

その場にいる私たちも耳にしたことがなかった、まったく新しいワードでした。
“えっ、HEN??”って。

スウェーデンでは「hon(彼女)」でも「han(彼)」でもなく、ジェンダーニュートラルな三人称単数代名詞として「hen」が使われているそうです。ジェンダーレスな考え方は北欧が進んでいることは知識としてあったので、2度目に検索をするときには北欧でしぼりました。すると、その他の地域では若者の流行り言葉だったけれど、スウェーデンだけは裁判の文書など、公的な場でも使われるとわかったんです。これだと思って発言したら、皆さん、「いいね!」と採用してくださいました。

とはいえ、最初は“でも、日本語の感覚だとHENって違和感ない?”と戸惑いもあったんです。“HENか。新鮮なワードだけど、どうしましょう”と、10分くらい悩んで。

英語でhenは雌鶏の意味だぞ、とか。

そうそう。

でも、その“HENって何?”という「???」が逆に光ってくれるかなと、期待したんです。

「変化のHENだよ」と、前向きな方向で。

クライアントさんからは「この耳なじみのないネーミングでどう広めていくつもりですか」と問い合わせがきましたが、「コンテンツとして発信して定着させていきます」と、決意表明をしました。『美的.com』『@DIME』とお互いにサイトをもっているので、『美的HEN』オリジナル記事をそれぞれが作成し、記事を相互掲載して、広く情報発信をしています。

同じ商品でも『DIME』と『美的』では目線が違うので、記事を読み比べる楽しさがあるのも、『美的HEN』の特長です。

そういえば、「HEN」は辞書に載ったとか……。

「HEN」という言葉の認知度はそれほど高くないので、いずれは辞書に掲載されるくらいにならないと、という思いから大辞泉の編集部にも相談してみました。

冗談かと思ってた!

正直難しいかと思いつつも、背景から丁寧に説明してご検討いただき、『デジタル大辞泉』に使用例として採用されることになりました。皆さん本当に親身に相談に乗ってくださいましたし、これも総合出版社ならではの強みだと思います。

浮かんだことを言って
みる、やってみるというのは、新しいことを始めるときに大事ですね。新鮮な響きの『美的HEN』はロゴの色合いもさわやかな印象です。

赤やピンクは女性的、青や黒っぽい色味は男性的なイメージに偏ってしまうと思って、ロゴの色味もジェンダーレスを意識したカラーにしました。『HEN』なら、ピスタチオやパープル系の色味だよねって。

ピスタチオカラーで最初ロゴをつくってみましたが、ちょっと地味な印象に見えたので、ミントカラーの方向に修正して。映えつつも爽やかさが出て、『美的』と『DIME』両媒体に似合うイメージが完成しました。そういう点もグループLINEを通じて、メンバーみんなで話し合うんです。Sちゃんはロゴのちょっとしたゆがみとか、誤植とか……細かいところに、よく気づいてくれました。さすが、美大出身。

彼女、多才なんです。2023年9月に開催した『美的』のリアルイベント『あいたい美的』の『美的HENブース』で掲出したポスターデザインもSちゃんがしたんだよね。

明日に入稿しないと、という急ぎの進行だったので、その場でつくっちゃいました。

デザイン科だったの?

映像でした。

Sちゃんみたいに、尖っていて元気な若者っていいなと思います。まわりの大人も元気になる。

(笑顔でうなずき合って)ですね。

チームの風通しのよさを感じます。入社1年目の新人として、
緊迫した空気が漂う会議の席で意見を求められることに、
緊張しませんでしたか?

めちゃくちゃ緊張しました!
仕事の関係で少し遅れて到着したら、初めて顔を合わせる先輩もいたんです。とてつもなく緊張したけれど、たぶん、新卒だから言える話はたくさんあると思うんです。若さゆえの根拠のない自信とか(笑)、根拠のない案を出せると自覚していたので。それを期待されていると感じて、なんでも思いついたことを言ってみるのが早いと、実践しました。発言してみると、新人の案だからと“ぺっ”と一蹴されることもなく、「なになに?」「それはどういう意味なの?」と先輩方が面白がってくださった。言いやすい雰囲気でした。

センスの良いZ世代として信頼しているので、Sさんのような若い世代の人のプランは編集部の企画会議でも、積極的に耳を傾けています。

私たちも薹が立って頭が固くなってくるので、なれや経験の範囲で考えてしまう癖があるんです。そこで思いもよらなかったところからポンとボールが飛んでくると、発想の転換になって、新しいアイデアも生まれる。それこそ、意見を求められてすぐに検索するアイデアも若者ならではの機転だな、って。フットワークが軽い。

その結果、本当に実のあるプランも出てきたりしますしね。

始動から約半年。局を超えて違う発想や経験をかけあわせた利点を、
どのように感じていますか?

広告的には、『DIME』と『美的』の両方に広告が出せることが強みだと、クライアントさんから言っていただけます。かけあわせることで『美的HEN』という、新しいメニューが生まれたことに大きな利点を感じてくださっている。

編集記事をつくるうえでも、『DIME』は男性読者を多く抱えているので、『美的』では絶対に集まらない回答がアンケートで得られて、すごくありがたいです。誌面のインタビューへ男性読者に登場していただいたりすることも協力し合って、垣根がありません。

『美的』だけであれば、ここまでメンズ美容に深入りすることはなかったかもしれない。メンズ読者層を抱えている『DIME』と一緒だから、背中を押されている。かけあわせの相乗効果がさまざまな企画で発揮されています。

意外と、女性誌×男性誌の組み合わせが実現できる出版社はないように思います。ここまでのコラボができるのは、小学館くらいなのでは。『DIME』のようにさまざまな企業と普段からおつきあいのある媒体も数少ないので、相乗効果を生みやすい土壌はあるように思います。『DIME』は多岐な分野を扱い、コラボレーションしやすい媒体ではあるので、企業やいろいろな媒体と連携してハブになりたいという編集方針がもともとあったんです。

コラボしやすい、という点は同感です。『DIME』はガジェット、『美的』は美容に対して熱心に情報を吸収したい人たちが読者なので、非常にマッチしやすい。

韓国コスメなど新規のお問い合わせもいただきますが、既存のクライアントさんがとても興味をもってくださることを実感しています。これまで女性がスタンダードだったブランドが同じ商品でも男性へ、といった派生はもちろん、“この1本が最高だからジェンダーを問わず、皆さんに使ってほしい!”というニーズがいっぱい眠っていたんです。

実際、提案の幅が広がります。クライアントさんが宣伝施策などで悩まれている部分に、ソリューションの1つとして『美的HEN』のコンセプトを説明すると、スッと話が進むことがよくありますね。

コンセプトに共感していただいていることは感じます。企業としてのダイバーシティやインクルージョンを意識する中で、ジェンダーや年齢を問わない『美的HEN』のコンセプトが合致しやすいようです。

個人的には、お高くとまっていないのがいいなと思っています。メンズ美容だけど、“キラキラ✨プロフェッショナル✨”みたいに、意識高い感を前面に出していなくて。親しみやすくていいですよね。

『美的HEN』オリジナル企画の「俺たちの『毛』問題」とか。

リアル! タイトルで身近な話題に感じられます。

ブランド全体で紙とWebはそれぞれ異なる特性があるなと感じています。本誌では新しいトレンドや『美的』が提案したい美容情報を発信することが主軸なのですが、Webでは“この毛をどうしよう”“今すぐこのクマを隠したい”といった、日常に寄り添うより実用的なコンテンツがよく読まれる傾向にあります。

毛問題でいうと、最新ひげケアなど、『美的』はぼくらが見逃しがちな視点を常にもっている。『DIME』の企画としても、参考になっています。

Kさんが実用的と話したように、『美的HEN』はこなれすぎた美容マニア向けではないんですよね。まだそんなに美容を知らないけれども、ちょっと触れてみると興味がわいて自分でも化粧水を買ってみようとか、そういうエントリー層へ向けて発信している。あらゆる垣根を越えて、美容の裾野を広げていきたい企画なんです。

昨年、編集長になったお祝いに、同年代の男性の友人からオーガニックなブランドの化粧水と乳液をプレゼントされたんです。男性から男性へギフトで化粧品を贈ることが、普通になってくるといいなぁと感じました。ジェンダーレスを謳う化粧品も増えているし、自分でも今度ギフトで友人に贈ってみようかな。

メンズコスメの売り場が増えましたし、百貨店のメンズコスメフロアでも、男性1人で化粧品を選んでいたり、カップルで買い物をしていたりする姿が見られます。

2019年に『メンズ美的』をつくっていた頃のメンズ美容事情と比べると、皆さんの意識が格段にアップしましたよね。当時は、メンズコスメのブランドから選ぶ、安いからドラコスを選ぶ、といった基準だったのが、2023年の今は男性が「メンズコスメの中からしか選んでもらえないのはいやだ」と言うんです。女性が使っているようなリッチなコスメもすべて含めた中から自分に合う1本を知りたいのに、男性だからとメンズコスメだけを勧められるのが、フラストレーションなんですって。4年間でものすごい変化を遂げました。

2018年秋に原料にまでこだわったナチュラル系のメーカーからメンズ総合ブランドが誕生したのが、メンズコスメが盛り上がっていく1つの大きなきっかけだったと記憶しています。年齢や性別にとらわれない個性としての自己表現を提案して、おしゃれに美容を楽しむ流れが生まれました。

『美的HEN』にかかわるようになって、今まではスルーしてしまっていたコスメの売り場を、よく観察するようになりました。アイテムとしてだけではなく、最近ではジェンダーを意識させないボトルデザインや色味もすごく増えたな、という印象です。

Iさんは今やベスコス(美的ベストコスメ大賞)選者ですから、目が光りますよね。 2019年はスキンケアがメインだったのが、メイクに興味をもっている男性がすごく増えました。BBクリームを塗っている40代もたくさんいれば、コンシーラーを使いたい20代もたくさんいて、ユーザーの変化を肌で感じますね。

メイクか……。化粧品のサンプルをいただいて試してみることは増えたけど、自分はまだそこまで追いついていないですね。もっと勉強します!

「俺たちの『毛』問題」に戻ると、同世代の男子は脱毛も常識になってきています。コスメも最新の情報をキャッチアップして、知らないと逆にはずかしいと感じている。

美容男子は、総じて世代間ギャップを感じますね。20代は美容に対する感度も高いし、抵抗がないので、ジャンルを問わず浸透がはやい。

私のまわりの40代男性たちは、どれだけ言っても化粧品をつける習慣が身につかない傾向がありますね(笑)。

過渡期が30代。前半と後半で意識が違うなと感じます。30代への訴求は今後の課題になりそうですが、Iさん、ちょうどそのボーダーですよね。

そうですね。38歳です。30代でも前半世代は、おそらく子どもの頃からメンズビューティーの概念が当たり前のようにあった。けれど、後半世代はその流れに乗っていない。まだ化粧品になじめない人が同世代に多く感じられるのは、その違いがあるように思います。

美容に対する感覚も、時代によって変化しますしね。昔は“男性がシミを気にするのはカッコ悪い”のような意識もあったと思いますが、今はお肌のことを考えて、シミはないほうが良いという風潮に。実際、クライアントさんのお話では、美容クリニックの集客がコロナ禍に爆上がりしたそうです。シミ取りやシワ取りに来る40~50代の男性がたくさん増えたそう。別のクライアントさんの例でも、メンズコスメのラインで40~50代向けのシリーズが伸びていると聞きました。40代以降でも年齢とともに悩みが増えるにつれて、意識が高まるようです。

働く男性の意識変化そのものもあると思います。身だしなみとして、肌が荒れているのは自己管理ができていない印象を与えてしまうので。営業職など、手元をきれいに手入れされている男性も増えましたよね。清潔感もビジネスシーンで重要な要素になってきています。

ちなみに、私の同世代の男性の友人もネイルサロンに通っている人がふえました。ネイルの手入れも男女の区別は特にないと思いますよ。

あるネイルサロンでは表参道店は20代、六本木店は40~50代が多いそうです。

やっぱり、30代が抜けている……。

もしかしたら、30代の分断はSNSで自分の顔を発信する世代か、そうでないかが、ポイントかもしれない。

あぁ~!そうかもしれないですね。私の世代はみんなInstagramやマッチングアプリに顔をアップするので、男子たちも見栄えはすごく気にしています。

年末のベストコスメ大賞ではリアルイベントを開催しているのですが、今年は『美的HEN賞』としてジェンダーフリーに使えるコスメにも贈賞をする予定です。近々、読者組織の「美的クラブ」にメンズも募る予定です。本誌の『美的』読者が30代中心なので、パートナーとして30代をコアに考えつつ、『DIME』は40代の読者もいるので20代中盤~40代前半くらいのイメージで新メンバーが加わってくれたらいいなと思っています。『美的HEN』のコンセプトをより具現化していきたいと考えています。

就職活動をしている
学生へメッセージを

志望部署に『美的HEN』と書いてもらえたら、嬉しいですね。

かなりピンポイント(笑)!

とはいえ、専任がとれるくらいに『美的HEN』が育っていたいのが本音です。『美的』として、こんな人と働きたいな、ということをお伝えさせてもらうと、1つは人と会って話すことが好きな人。自分の頭の中だけで考えていても幅の狭いプランしか出てこないので、知らない世界の人とたくさん話して、それを持ち帰ってプランにできるといいですね。コミュ力を磨いていれば武器になります。

「こんな仕事がしたい!」という熱い想い。その純粋な熱意も武器になると思います。面接の場で「これがやりたい」とアピールするのは勇気がいるかもしれないけれど、抑えきれない熱い想いを学生さんが語ると、やはり惹かれます。

『DIME』や『美的』の特性でもありますが、「偏愛」というか、偏りすぎるぐらいがちょうどいい。自分が愛するもの、夢中になれるものがないと、面白くないかなって。その“好き”をどう配属された媒体で仕事に繋げられるかが、働くうえでのひとつの楽しさだと考えています。

そう思います。私は図鑑志望で入社したのですが、「志望部署でなくても、自分の特性が生かせるし、楽しいよ」というのは最初に伝えたいです。入社2年目でOB、OG訪問を受ける機会が増えて、「自分の頭で考えて、あなたにしか言えないことを形にしてほしい」と伝えています。例えば、学生時代にバイトリーダーだった経験が、まんがや雑誌の企画で生かされるかもしれない。何が仕事で生きるかはわからないから、「学生時代は好きに過ごしたら?」って。自分オリジナルの経験を学生時代にどれだけ積めたのか。それは、社会人生活での支えになると思います。 さきほど、どうして「HEN」にたどり着いたかお話ししましたが、それは学生時代にスウェーデンの就労事情を学んでいたからなんです。美大は就職をしないと路頭に迷ってしまうケースが多く、女性でも稼がなくちゃという観点で勉強していました。日本では出産や育児で女性が職場を離れる率が高いけれど、北欧ではジェンダーやライフステージに関係なく、仕事を続けられる環境が整っていることを知っていたんです。でも当時は、まさかその知識が会議で役に立つなんて、想像もしていませんでした(笑)。 あとは臆せず、頭に浮かんだプランをどんどん言葉にしてみることですね!

では、さっそく……。次の展開として、まんが『葬送のフリーレン』と組んで何かやりたいなとひそかに企んでいます(笑)。

主題歌を担当しているYOASOBIさんを『美的HEN』でメイクするとか?

あっ、いいですねぇ! 男女混成ユニットですし。

こういう感じでおしゃべりしながら、また新しい企画が生まれていく(笑)。

“それいいかもぉ!”みたいなノリで形になっていくこともありますよね。