『GOAT』編集者座談会
2024年に誕生した“かつてない文芸誌”『GOAT』
デジタル化の波に抗い、紙の文芸誌で勝負をかける情熱を語り合う。
※本記事の内容(所属部署、巻数、部数など)は取材当時のものです。
対談メンバー
チーム『GOAT』の皆さん
M.K
出版局
文芸編集室
編集長
2006年入社(経験者採用)
T.K
出版局
文芸編集室
デスク
2023年入社(経験者採用)
N.R
出版局
文芸編集室
デスク
2023年入社(経験者採用)
GOAT
ジャンルも国境も越えて、小説をもっとカジュアルに―。「自分たちが心の底から読みたい、みんなに本当に読んでほしい小説を集めた文芸誌を」という編集者の熱意から誕生した、紙の文芸誌『GOAT』。メディアでの注目度も高く、2024年11月の創刊から累計57万部と、文芸誌としては“かつてない”快進撃を続けています。
自己紹介をお願いします。
経験者採用で、文芸編集者の募集に応募しました。どうしても文芸の編集がしたくて、無謀にも、経験者対象の募集に未経験で飛び込んだんです。小学館の文芸は歴史こそ浅かったものの、片山恭一さんの『世界の中心で、愛をさけぶ』や市川拓司さんの『いま、会いにゆきます』といったベストセラーを次々飛ばして、絶好調でした。その勢いにも背中を押され、面接でも「経験はゼロですが、やりたいです! 頑張ります!」とやる気だけは誰にも負けなかったと思います。
いざ採用通知が届くと“なぜ私を?”と驚きましたが(笑)、本当にうれしかった。未知数の可能性にかけてもらった恩を返したい、全力で頑張ろうと入社しました。これまでは文芸の編集を中心に、『女性セブン』で週刊誌の編集も経験しました。『GOAT』では編集長を務めています。
出版社、IT系のスタートアップを経て、入社しました。一度業界を離れたものの、文芸を愛する気持ちが根っこにあったので、読者として小説に触れながら“こんなに面白いものをつくるところから携われないのは、やっぱりさみしいな”と感じるようになったんです。前職の出版社でも、文芸の編集者をしていました。小学館は文芸を看板としている印象が薄いながらも、『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉さん著)『サラバ!』(西加奈子さん著)など本屋大賞や直木賞を受賞するような名作を思わぬところから世に送り出してくる。文芸の編集部はベンチャー精神にあふれているんだろうなと、その当時から興味をもっていたんです。
文芸編集者として採用され、『GOAT』には立ち上げから参加しています。
自分も経験者採用です。新卒で入社した出版社では文芸の編集と電子書籍の営業を担当しました。編集者として手がけた書籍は150冊を超え、文芸誌の副編集長、編集長も経験しました。仕事も充実して満足していたのですが、2人の子どもを育てながら働くことを考えたときに、小学館のほうが自分の理想に近い働きかたができるのではないかと感じて転職しました。編集者個人の裁量が大きく、設定したゴールへ向かって自己管理しながら仕事を進められる環境に惹かれたんです。
実は、経験者採用に応募するか迷っていたときに『GOAT』の企画が立ち上がっていることを知ったんです。当時はまだ誌名も決まっていませんでしたが、この時代に新たな紙の文芸誌にチャレンジしようとしていることに驚きました。“そんな夢のある企画が実現できる会社なんだ!”という期待感は、ポジティブな動機としてすごく大きかったです。
紙の雑誌が続々とデジタルへ移行する時代に、「紙の文芸誌」誕生は驚きをもって迎えられました。『GOAT』船出のストーリーを聞かせてください。
『GOAT』を立ち上げるきっかけが、まさに紙の雑誌の相次ぐWeb化でした。小学館には紙の文芸誌が3誌ありましたが、2020年秋に『本の窓』『きらら』がデジタルへ移行し、『STORY BOX』も2022年にWeb化される判断が下されたんです(※紙の最終版は2023年9月号)。読者層やコンセプトの違う文芸誌の紙版が1誌ずつなくなり、最後の砦だった『STORY BOX』も紙からの撤退が決まってしまった。『STORY BOX』には2021年から編集長として携わっており、同僚の編集者と「さみしいね」「また紙の文芸誌で仕事ができたらいいね」と立ち話をしたことを覚えています。とはいえ、そのときは“またいつか”の気持ちだったんです。
時代にも、会社の方針にも逆行してしまう“夢物語”として。
はい。“できるわけないよね……”と、ややあきらめムードでした。ですが、著者さんにWeb化のご説明にうかがうと、皆さんも紙の文芸誌に強い想いや愛情をお持ちでいらっしゃるのが伝わってきたんです。共感が心強さともなって、“できるわけない”が“やっぱりやってみたい!”へと変わっていきました。同僚に“もう1回やってみない?”と呼びかけたところから、企画が動き出した気がします。言霊の力というのか、やりたいことを具体的に言葉にすることで、本気で取り組もうと覚悟が決まったんです。自分たちが心の底から読みたい、いま、みんなに読んでほしい小説を詰め込んだ紙の文芸誌を、私たちでつくろうよ、って。
どうすれば実現できるか―。そこで考えたのが、核となってくれる作家さんにお力添えをいただくことでした。真っ先にご相談したのが、小学館刊行の『サラバ!』で直木賞を受賞された西加奈子さんだったのですが、光栄なことに「この時代に紙の文芸誌をつくるならばぜひ!」と、快く引き受けてくださいました。西さんに創刊号で短編を書いていただけることになって企画が現実味を帯び、作家さんたちへのお声がけや、出版局、マーケティング局といった社内での打診、調整も進めていくことができました。
タイトル『GOAT』の由来は何ですか。
ヤギのゴート(goat)です。新たに創刊する文芸誌なので、わかりやすく「小説」や「文学」にまつわる名称も考えましたが、小説をもっとカジュアルに楽しんでほしい、小説のすそ野を広げたい、という想いから始まった新雑誌です。文芸誌をまだ手に取ったことがない人、ちょっと苦手だなと遠ざけてきた人にとって、初めての文芸誌になるようなものをめざしていたので、できる限りハードルを下げて親しみやすい名前にしたいなと。そこで、「いまの時代にあえて紙の文芸誌を創刊するのだから、“紙を愛してやまないヤギ”で“GOAT”はどうかな」とひらめいたんです。
さらに、スポーツでよく使われるスラング「Greatest Of All Time(史上最高の)」にかけて“かつてない文芸誌にしたい”という想いを込めました。「文芸誌の名前がヤギなんて……」と反対されるかなと恐る恐る同僚に意見を求めたら、あっさり「いいんじゃないですか」と受け入れてくれてホッとしました。
会議で発表されて、率直にすごい名前がきたと思いました。スラングの“史上最高の”だけでなく、「go at」には“熱心にとりかかる”というポジティブな意味もある。シンプルな単語ひとつで覚えやすく、大賛成でした。
僕はその会議の後に入社したので、個別にMさんから聞きました。サッカー界では史上最高の選手を意味して、“GOAT”はメッシかロナウドか、という論争が繰り広げられてきたんです。サッカー好きなので耳なじみがあって、「Greatest Of All Timeにかけているんですか?」と返した記憶があります。
スポーツで使うスラングという点に唯一反応してくれたのがNさんで、「やっと通じる人がいたー!」と思いました(笑)。
表紙を飾るヤギのキャラクターが目を引きます。
ゴートくんと言います。『GOAT』のタイトルの上に「小説を、心の栄養に。」というキャッチコピーを入れていますが、ゴートくんは物語を栄養にして生きている、紙を愛してやまないヤギなんです。ゴートくんの表紙を気に入って買ってくださるかたもいますし、ぬいぐるみも大人気で、雑誌の顔として、読者の皆さんに愛していただいています。
ゴートくんと共に4号めまで歩んできて感じるのは、ゴートくんは私たち自身ではないか、ということです。人生でつらいときや孤独なとき、小説が心に寄り添ってくれたり、道しるべになってくれたりしますよね。自分も“大切なことはすべて小説から教わってきた”という思いが強くあって、小説を心の栄養にしているゴートくんにはとても共感するんです。
その感覚わかります。ヤギについて検索したり、動物園などで写真を撮ったら報告し合ったりと、編集メンバーがヤギに興味を持つようになったのも、ゴートくんに親近感を抱いているからかもしれませんね。
ちなみにゴートくんのモデルとなったのは、井の頭自然文化園のヤギさんです。
チームの明るい雰囲気が伝わります。編集メンバーはどう編成されたんですか。
『GOAT』には編集部がないんです。こちらから声をかけたり、噂を聞いて自分もやりたいと手を挙げてくれたり、自然発生的に10人ほどのチームができあがりました。有志の集まりなので、それぞれメインの日常業務を抱えながら、『GOAT』の編集作業をしています。
通常業務と並行して500ページ近いボリュームの文芸誌をつくるのは相当ハードなのではと、察します。それだけ“やりたい!”と熱い情熱をもったメンバーが集まっているんですね。
その熱量を大切にしているんです。『GOAT』の柱のひとつが「ジャンルレス」であることで、“純文学誌”“エンタメ誌”とくっきりすみわけをするのではなく、もっと自由に、おもしろいものがワーッと集まった“おもちゃ箱”のような文芸誌をめざしているんです。編集メンバーはキャラクターも嗜好も得意ジャンルもバラバラなので、ひとりひとりが自分のベストだと思う“推し”を持ち寄ったら、最高の読み物になるだろうと考えました。全員が「絶対にいまこの作品を読んでほしい」「いま一番、このかたに書いてほしい」と思うものを集めるという基軸は、チームで共有しています。
実際に「なにかやりたいことはない?」という問いかけから、『GOAT』への参加が始まったんです。そこから各々“自分はこの人に!”と思う作家さんに、「推しを持ち寄る新しい文芸誌に書いていただきたいです」とアタックしていきました。ジャンルレスなので小説でなくてもOKで、変わり種というか(笑)、ユニークな企画がいっぱい詰まっているのが『GOAT』なんです。編集長のMさんはどんな個性的な企画を打診しても「いいね!」「おもしろそう!」「やってみたら」とゴーを出してくれるので、責了(校正の最終作業)で他の編集者が担当する企画に目を通して“こんなページあったんだ!”と驚くことがよくあります。
その驚きや発見が、『GOAT』に携わる醍醐味でもありますよね。個性がバラバラなメンバーが集まっているからこその化学反応で、自分の発想にはないものが飛び出してくるびっくり箱感は、刺激になります。仕事のスタンスにも違いがあって、第1号をつくりながら次は何をしようかと話していたときに、みんなは「1号めと同じことはやりたくない」と言っていたんです。自分は飽きることなく続ける中でやりがいを見出すタイプなので、ビックリしてしまいました……。僕の企画は、加藤シゲアキさんが選考委員長を務める「GOAT×monogatary.com文学賞」や、著名人や作家のかたがたにおすすめの1冊を紹介してもらう「私のGOAT本」、最新号にはありませんが、文庫に3つの新しい装丁を提案する「GOATカバーギャラリー」など、毎号載っているので。
本当だ! Nさんの企画はすべて生き残っていますね。
継続したいタイプなので(笑)。「私のGOAT本」も4号までで、24人ぶんの原稿が集まりました。積み重ねることで読み比べるおもしろさも生まれますし、編集しながら毎号、新しい原稿が届くのを心待ちにしています。
企画を継続する、しないなど、そうした個性の違いも含めてのごちゃまぜなおもちゃ箱感が、媒体のカラーとなっているように感じます。
いい意味でのカオスにしたいと思っています。個人的にも想定内のものより、「うわっ」「そうきたか!」と予想を裏切られるものに心惹かれるので。“『GOAT』ってこういう世界だよね”と縛ることも、縛られることもない、とらえどころのない存在でありたいです。
第2号のプロフィール帳は「そうきたか!」の異色なページでした。
おっ、Tさん渾身の一作。梨さんの『書き終わったら幸せ様まで渡してね』は読者のみなさんの反響が大きかったですよね。
ホラー作家の梨さんと平成女児の話題から「プロフィール帳って、すごく流行りましたよね」と盛り上がって、『GOAT』は自由度の高い文芸誌だし、プロフィール帳からホラーを創作しましょうということになったんです。『ちゃお』の編集部を介して協力してくださった漫画家のきたむらゆうかさんが、平成テイストのイラストを描いてくださり、そのイラストをもとに『GOAT』のアートディレクションをてがける沼本明希子さんが抜群の解像度で、蛍光ピンクのインクを使用した多幸感のあるプロフィール帳に仕立ててくださいました。
第2号では野﨑まどさんの『GOAT忍法帖』も、異色の存在感を放っていました。
あの号は遊びが盛りだくさんで、ちょっと張り切りすぎちゃったかな、という反省もあります。
その傾向は第2号だけではない気がします(笑)。
『GOAT』は本文が白一色ではなく、色紙が使用されていることも特長です。黒さが際立つ第2号では、とりわけ巻頭の「NTラシャ漆黒」の黒色にシビれました。特別な製紙技術を施した黒い紙と朝井リョウさんの掌編を組み合わせたのは、なぜですか。
紙で出すからには色のついた紙や、表紙の特殊加工、原稿用紙を模したミニサイズの綴じ込みページなど、贅沢なしかけを持ち味として毎号盛り込んでいるんです。「NTラシャ漆黒」は第2号の特集テーマ「悪」に合わせて採用した紙です。朝井さんに執筆をお願いするにあたり、書いてみたいと興味を持っていただけるような提案をしたく、「究極の黒い紙で掌編を書きませんか」とオファーしました。朝井さんには、「いろいろな文芸誌からさまざまな提案をいただいてきたけれど、『この紙で書きませんか』という資材からの提案は初めてでした」と言っていただけました。インスピレーションをかきたてるようなアイデアも、『GOAT』のオファーでは意識しています。
編集者の推しを集めた文芸誌として、『GOAT』を紹介する上での、皆さんの推しポイントを教えてください。
たくさんあって悩みますね。『GOAT』の取り組みとして、資材や印刷技術にフィーチャーしているところが推しです。奥付には資材リストが紹介されていますし、印刷所・製紙工場の見学や表紙制作についてのルポルタージュも掲載されています。物語を楽しみながら“雑誌や表紙はどうやってつくられているのだろう”“どんな人が本づくりに携わっているのだろう”と理解を深めることで、読書体験がよりゆたかになると思うんです。
編集者としては、小説の編集作業以外にも得意分野を生かしたチャレンジができる環境に魅力を感じています。ゴートくんはMさんとデザイナーの沼本さんが試行錯誤してつくりだしたキャラクターですし、ぬいぐるみなど、ゴートくんの関連グッズも編集者がディレクションをしているんです。印刷所に勤めた経験のある編集者は、ペーパークラフトでブックエンドをつくっていました。
僕の一番の推しは“新しい出会いができる”こと。掲載されている小説はジャンルもバラバラなので、普段手に取らないタイプの作品にも出会えます。それに、一般的な文芸誌で執筆されるのは主に作家さんですが、ジャンルレスを謳う『GOAT』には文芸誌には顔を出されないかたたちも集まっているんです。小説は書かないけれどもエッセイやコラムならと書いてくださったり、小説好きなことをあまり知られていなかった著名人が本について語ってくださったりと、ページを開けば、想像していなかった出会いがきっとあります。小説好きならば読んだことのない作家さんとの出会い、普段小説を読まなくても「この人が載っているのなら」と文芸誌に初めて出会う、そんなきっかけになると思います。
「この人が載っているのなら」という点では、“文芸誌にこの人が!?”と新鮮みがあるカラーグラビアも気になります。ファッション誌のようなスタイリングやつくりこまれた世界観も、いい意味でギャップがあります。
本気のグラビアで、僕はかなり好きです。第3号を例にとると、池田エライザさん、浜辺美波さん、目黒蓮さん、藤ヶ谷太輔さんなどに登場していただきましたが、こうした芸能分野のかたがたがグラビアに集う文芸誌は他にないんじゃないかなと思います。この号は本格ミステリー作家さんたちにも登場していただいて、青崎有吾さん、阿津川辰海さん、白井智之さんのかっこいいグラビアも掲載しました。憧れの対象として作家さん像を切り取れている気がして、『GOAT』の大きな強みとしてアピールしたいです。
そこまで本に親しみのない人にとって文芸誌は手を伸ばしづらく、難しそう、と苦手意識を持たれてしまうことが長年もどかしかったんです。その点で「ハードルをすべて取り払う」ことを目標としていたので、文芸誌として異例の増刷を重ねていることは素直に喜んでいます。2024年に刊行した第1号は初日に完売が続出して、各地の書店さんから「今日入った創刊号がすべて売り切れました」「初日で完売する文芸誌は初めてです」という声が続々と届きました。
そもそも、“小説はこうあるべき”と狭い世界に閉じ込めてしまっていたのは、つくり手のわれわれだったのかもしれないと思うんです。『GOAT』では、メンバーそれぞれが小説を本気で遊び倒す意識を持って取り組んでいます。本好きのためのホテルと期間限定でコラボルームのプランを設けるなど、他ジャンルとも積極的にコラボして、小説の世界をどんどん広げている。忙しいと遊び心を忘れがちになるので、実は本気で遊ぶって、しんどい面もありますよね。だからこそ、常に「こういう切り口はどうだろう」と遊ぶことに妥協せず、自由な発想を失わずにいたいと思っています。
『GOAT』を知ってもらえて、「つくっていて楽しそう」「こういう文芸誌なら参加してみたい」と業界内外のかたに声をかけていただけるたびに、「みんなで頑張って、よかったな」とジーンとします。
『GOAT』を知ってもらえることは、出てくださった書き手の皆さんの読者が増えることにつながると思って、心の中でガッツポーズをしています。推しといえば、手に取りやすい低価格もポイントです。
ゴート価格(定価510円)は衝撃でした。読者としてはありがたいですが、ずっしりとしたボリュームの文芸誌なのに採算が取れるのか心配してしまいます。
この時代に紙の文芸誌を出すからにはインパクトが必要と考えて、ゴートにかけた「510円」に設定しました。本文に色のついた紙を使ったり、特殊加工を施したりとこだわりが詰まっているので、純粋にコストを考えたら、定価をもっと高くするほうが妥当かもしれません。でも、店頭での存在感、可愛さに目をとめてジャケ買いしてくださるかたは多いですし、『GOAT』を知っていただくうえでは大切なんです。定価は“安すぎる”という意見もありますが、『GOAT』を起点とした単行本化や文庫本化などで採算をとっていけたらと考えています。おかげさまでゴートくんの人気も出ていますし、マーケティング局などとも連携して、文芸誌の枠組みを広げたさまざまなプロジェクトを動かしているところです。
そのひとつとしてちょうど、6月3日発売の最新号にあわせて文庫フェアが始まります。第4号のテーマが「食」なので、小学館の既刊の文庫から食にまつわる作品を4作選んで、ゴートくんバージョンのダブルカバーで書店さんに並びます。
ゴートくんが文庫の顔になるんですね。『GOAT』には第1号から「愛」「悪」「美」「食」と漢字1文字のテーマがあります。編集者がアイデアを持ち寄って決めているんですか。
毎号のテーマは私が決めています。シンプルで、多角的なアプローチができるテーマを考えた結果、漢字1文字にしています。「愛」の形は多様化していますし、「悪」も世界情勢を揺るがす大きいものから身近な小さなものまで、視点によってさまざまです。書き手の皆さんに提案するお題ですから、挑みたいと創作意欲をそそるテーマを念頭においています。“このテーマでどんな作品が集まるかなぁ”“作家さんたちは『そうきたか』と、おもしろがってくれるかなぁ”と想像しながらアイデアを練るのは、一番大切なところだと思っています。
毎号のテーマは、作家さんだけでなく、僕らにも投げかけられていると思っています。次のお題は「食」と聞いて、“自分だったら『食』で何を出そうか”と各人が企画を考えるので。できあがると見事に解釈がわかれていて、他の編集者のページに“そうきたか”とうなっています。
『GOAT』の今後の展望を聞かせてください。
Mさんも話していましたが、『GOAT』の誌面から飛び出した関連グッズや企画を生み出すことはメンバー全員の夢でもあります。もちろん文芸誌なのでオリジナルの書籍も出していきたい。「『GOAT』発の作品、おもしろいね!」と話題になって本誌にもいいシナジーをもたらすような、読み応えのある作品に期待していてください。
就活生へのメッセージをお願いします!
自分のやりたいことをまっすぐに聞かせてくれる人と、一緒に働きたいです。『GOAT』はもちろん、小学館にはやりたいことを形にできる環境があると思うので、挑戦してみたいことがあったら臆せず言葉にしてほしい。ただし、自分の考えに凝り固まらず、興味のないこともおもしろがれる人であってほしいです。いろいろな可能性を模索できる環境だからこそ、食わず嫌いで選択肢を狭めてしまうのはもったいないなと、僕自身も感じています。
『GOAT』には経験者採用のメンバーも多く、歩んできた道も個性もまったく違う編集者の集まりです。でも自分と違うからこそ尊敬もするし、思いもよらない企画が形になったりもする。会社員として組織に属せば、希望する部署に配属されないこともあります。そんなときは、どうかがっかりしないでほしいと思います。Mさんは企画や仕事を進めるスピードが速くて「週刊誌の経験ってすごいな」と尊敬しますし、さきほどお話ししたように印刷会社での経験がグッズ制作に生かされたメンバーもいますし。どんな経験も仕事で役立つチャンスがめぐってきます。その場所で「ここから何かを学ぶぞ」と柔軟にトライして、吸収して、流れに身を任せてみる。私も運に導かれてここまできたようなものなので、与えられた結果を信頼してみてもいいんじゃないかなと思います。
同感です。運というか、縁というか、たまたま耳にした情報や、たまたま出会った人とのめぐり合わせで人生はまわっていると感じています。結果を焦らず、どんな状況でも前向きに受け入れる。置かれた状況が今後の人生にとって最良の結果につながるように動き続けていれば、毎日が充実すると思います。
手前味噌ですが、いいチームだなと思って聞いていました。私は常々、みんなと同じである必要はないと考えているんです。個性はひとりひとり違うので、苦手なものはフォローし合えばいい。引け目に感じる必要はありません。それよりも「これなら輝ける」「これだけは負けない」という、あなただけの強みや推しがあることを尊重すべきだと思うし、『GOAT』の編集方針でもあります。自分だけの持ち味を自覚して、課題を突破する推進力にしてほしいと思います。
あと、文芸編集の経験者採用に無謀な挑戦をした身としては……、人生、どこで道がひらけるかわからないと伝えたいです。「これができないから無理だ」とやる前からあきらめずに、目の前のチャンスに恐れず飛び込んでほしいと願っています。
『GOAT』は有志の集まりですが、出版局以外に配属された新入社員にも門戸は開かれていますか?
もちろんです。大変だとは思いますが、日常業務をこなしながら、かかわってもらうことはできますよ。
ぜひ手伝ってほしい! 新しい仲間を、僕らはいつでも大歓迎です。